ヒョウ Leopard

西はアフリカ、東は極東まで
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大型肉食獣の中でも、そのしなやかな体と美しい模様を誇るヒョウは、アフリカ大陸からアラビ ア半島、ユーラシア大陸の東の端にまでみられる、イエネコを除くネコ科の中で最も広く分布する動物です。彼らは古くから人間との関わり合い を持っており、様々な文 化、芸術や紋章の中などでその姿が描かれてきました。

ヒョウはライオントラジャガーと共に世 界四大ネコ科動物の一つに数えられていますが、その中では一番小さな体をしています。 彼らの体長は90〜190cmほどで、 さらに90〜110cmの長い しっぽを持っています。オスはメスよりもかなり大きくなり体重が37〜90kgになるの に対し、メスの体重は 28〜60kg程度です。そしてこれまで知られている最も 大きな個体として全長2.92mもあるヒョウがいたことが記録に残されています。 また他のネコか動物と比べて、彼らは胴体が長く、足が短いプロポーションを しています。

「ヒョウ柄」と その名を冠した名前が付けられていることからも分かるとおり、彼らの一番の特徴といえばやはりその美しい模様が描かれた毛皮で す。彼らの毛 皮の下地は黄褐色や灰色、栗毛色など個体や住む地域によって様々な色をしており、その上にバラの花のように丸く並んだ形の黒い色の斑点でびっしりと埋め尽 くされています。この模様は地域によって差があるといわれており、東アフリカに棲むヒョウのものはバラ模様が丸い形をしていますが、アジアに棲むヒョウで は四角い形をしているそうです。

同じような模様を持つものとしてジャ ガーやチーターが有名ですが、ジャガーのものは花模様の中にさらに小さな斑点があることでヒョウのものとは区別することが出来ます (詳しくはジャガーの ページを見てね)。またチーターの模様はバラのような形はしておらず、ずっとシンプルな丸い形をした黒い斑点が並んでいます。

クロヒョウ、そして第三のヒョウ
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ヒョウには一般的なヒョウ柄を持つものの他にもう一つ「クロヒョウ」と呼ばれる真っ黒な毛皮をしたものがいるこ とがよく知られています。昔はクロヒョウは ヒョウとは別の種類と考えられていたこともありましたが、この2つは完全に同じ種の生き物です。 なぜ同じヒョウなのに、クロヒョウのような個体が産まれる かというと、ヒョウの中には黒い毛皮のもとになる遺伝子を持つ個体がおり、そのような個体同士が親になるとクロヒョウが生まれてきます。

クロヒョウの毛皮は山岳地域や熱帯雨林の中など、木々が生い茂った場所で特にカモフラージュとして働き、生きていく上で有利になります。このため熱帯地域 では他のところと比べてクロヒョウの割合が多く、マレー半島などではなんと生息するヒョウ の半分がクロヒョウだといわれています。一方アフリカのサバンナのように 周辺が開けた地域ではクロヒョウの黒い毛皮は逆に目立ってしまい、他の動物から見つけやすくなることから不利なものになってしまいます。このためこのよう な地域ではクロヒョウの姿を見かけることはあまりありません。

ちなみにクロヒョウは本来褐色である地色の部分が黒くなったもので、さらにその上に元々ある黒い模様が微妙に色合いが異なる黒い毛で描かれています。した がってクロヒョウの毛皮を日の光の下でよく観察すると、うっすらとおなじみのバラ模様見えるそうで、確かにヒョウの一種であることが分かるそうです。

さらに歴史上には普通のヒョウ ともクロヒョウとも違った模様をした毛皮の個体がいたという記録も残されています。例えば1885年南アフリカのグラハムズ タウンで捕まえられたヒョウは通 常よりも強い色のオレンジ色を持っており、さらに黒い斑点は通常のものよりもずっと大きく、斑点同士が互いに融合して、頭 のてっぺんからしっぽの先まで黒い筋のようになっていたといわれています。またこれと同じように黒い部分が肥大したヒョウの毛皮が1912 年にインドでも見つ かっています。

これらの毛皮を持つヒョウは「準黒 変種」とよばれ、一見するとちょうど通常のヒョウとクロヒョウの中間的な存在と思えます。しかしクロヒョウは通常のヒョ ウの地色の部分が変化したものであり、黒い斑点が大きくなった準黒変種のヒョウ は黒くなる方法がクロヒョウのものとは全く異なります。実はクロヒョウの中 にも同じように黒い斑点部分の模様が大きく肥大化したものがいることが報告されており、そのような個体ではうっすらと見えるはずのバラ模様も失われて、完 全に均一な黒い毛皮で覆われているそうです。

このような準黒変種のヒョウは南アフリカやインドの特定の地域に多く見られることから、一部のヒョウの生息群の中にこのような遺伝子を持つグループがある のではないかという説もあります。しかし、近年大規模な狩猟や環境の変化によってヒョウの数が減少すると共に、このような遺伝子を持つヒョウたちも姿を消 してしまったといわれています;。

お食事は木の上で
ヒョウは適応能力がかなり強い動物で、草原や森林地帯、熱帯雨林から標高の高い 山の上や寒冷地域まで、様々な地域でその姿を見ることが出来ます。特にアフ リカではかつてキリマンジャロ山の標 高5638mの高地でヒョウの死体が見つかったこともあります。それぞれの地域では捕れる獲物や天敵の有無など様々な 点で生活環境に違いがあることから、各地にいるヒョウたちは少しずつその性質も異なるといわれており、例えば寒冷地に住むヒョウの毛皮は熱帯地域に住むも のより長く密集したものになる傾向があるそうです。またアフリカでは高地に棲むものの方が低地に住むものより体格が大きくなるそうです。

ヒョウの主な 獲物はウシやシカの仲間で、アフリカではインパラやトムソンガゼルのようなアンテロープ類、アジアにおいてはアクシズジカやホエジカのよう な シカが彼らの食べ物の大部分を占めています。その他にもサルやげっ歯類、は虫類、両生類、鳥そして魚など、機会があれば非常に多様な種類の動物を何でも食 べてしまいます。また体の小さな彼らはライオントラと比べて小型の獲物を狙う傾向があり、昆虫などを食べることも少な くありませんが、逆に900kgを超えるジャイアントエランドやワニのような大型の獲物を 狩った例も知られています。このような大きな獲物の場合一度で食べる以上の餌を得ることができ、2週間ぐらい狩りに行かなくても大丈夫なこ ともあります。

通常ヒョウは単独で行動し、狩りなども一人で行われます。またアフリカのようにライオンやトラなどヒョウよりも強い肉食動物がいる地域では、それらに襲わ れることを避けるためヒョウたちは夜行性となり、獲物も夜に探すようになりますが、天敵がいないところでは朝方や曇りの日の日中でも狩りを行います。彼ら は周囲の景色に溶け込んで獲物の目から姿を隠すことが非常に上手く、音もなく獲物に忍び寄ります。そして獲物が射程距離圏内に入ると一気に飛びかかり、の ど元に食いついて相手を窒息死させてしまいます。

狩りに成功すると、すぐさま彼らは獲物を茂みの中に隠したり、木の上の高い ところにつり上げたりして、食事もそこで行います。これはライオンやハイエナのような他 の肉食動物にせっか くの獲物を横取りされるのを防ぐためで、頭の大きな彼らはその強力なあごを使っ て、彼らは自身の3倍以上も体重がある獲物でさえも引きずっていくことが出 来ます。しかし、ここまでしても時には木の 上までライオンがやってきて獲物を持っていってしまうことがあり、決して安心することは出来ません。またライオンやトラは、ヒョウの持つ獲物だけでなく、 ヒョウ自体をも狩りの対象とすることがあり、敵に遭遇するとヒョウ達は体をこわばらせて、頭を下げる威嚇のポーズを取って抵抗しようとします。また木登り が得意な彼らですが、それとと もに泳ぎも上手いそうです。

先にも述べたとおり、ヒョウは普段一頭で生活し、他のヒョウと出会っても繁殖をするとき以外は互いに無視し合うのが普通です。しかしごくまれに複数のヒョ ウが一緒にいるところが目撃されることもあり、3〜4頭ぐらいの小さな群れを作ることもあるそうです。

それぞれのヒョウはなわばりを持ち、普段はその中で全ての生活を行うことが知られています。なわばりの大きさは地域によって異なり、オスの場合では通常30〜78平方キロメートル程度ですが、ナミビアなどで は100平方キロメートル以上、時には300平方キロメートルを超え るという報告もされています。 またオスに対してメスのヒョウのなわばりはずっと小さく半分から3分の1程度しかありません。

それぞれのオスは互いになわばり意識が強く、オス同士が出くわすと激しいなわばり争いが起こり、時にはどちらかが死に至るケースもあります。それとは対照 的にオスは自分のなわばりにメスが入ってきてもそれほど怒ることはなく、オスのなわばりの中に複数のメスのなわばりが重なりあうことがよくあります。


[画像撮影場所] 
天王寺動物園
天王寺動物園様リンク

 
旭川市旭山動物園
旭川市旭山動物園様リンク

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