日本の動物園でもおなじみの
カピバラ君は
ネズミなどの仲間である、げっ歯類の中で世界最大の
動物です。彼らはとても愛嬌のあるキャラクターで有名ですが、
どことなくもの言いたげな眼と、大きなお鼻、ずんぐりした体がそのかわいさの秘密でしょうか?
大人のカピバラ君は
体の長さが1.
2m、体の高さが50cm、体重が65kgにもなり、最初に見た時は
ホントにネズミなの!?と
いうぐらいの大きさです。
またオスよりメスの方が若干体重が重くなります。
彼らはネズミの仲間なので、非常に前歯が発達していてそれを使って草を噛み切って食べます。比較的かたい植物を食べることがある彼らのはは次第にすり減っ
ていきますが、それを補うように前歯も一生の間生え続けます。ちなみにカピバラの口の中にはこの前歯をあわせて20本の歯が生えています。
彼らの全身は
ゴワゴワした丈夫な毛
皮で覆われていますが、この毛皮によって強烈な日光が直接肌を焼くのを防いでいます。また更に彼らは泥浴びなどをするこ
とによって、より効果的に日焼けから身を守ることが知られています。その他カピバラは前足に4本、後ろ脚に堅い爪のついた3本の指を持っており、指の間に
はクモの巣状の水かきが付いています。
我々日本人などからすると、カピバラ君のことはよく知っていても彼らの生息地についてはいまいちよく分からなかったりするのですが、実はパナマやコロンビ
ア、ブラジル、ベネズエラ、
アルゼンチンなど広い
南米大陸の大部分の森の中に生息しています。
彼らは普段は陸の上に住んでいますが、
実は泳ぎがとても上手で常に水辺の近く
(20m以内)にいることが多くなっています。それでもって敵に襲われたりす
ると大慌てで水の
中にもぐってしまいます。この時はなんと
5分近くも水の中に
潜ることができるのですが、目と鼻先だけ出して呼吸をしながら敵がいなくなるまで、ず〜っと水の中に居ることもできます。このため彼らは森
の中でも池や
川、沼などの水
辺に近いところによく見られます。
またあまり長い間水に入らないと皮膚が乾燥してしまったり、体に脂肪が多く水に浮きやすい体をしていたりと彼らにとって水はなくてはならないものとなって
います。ですがその体型に似合わず実は陸上でも素早く動くことはでき、あんな短い脚をしているにもかかわらず驚いたときなどはなんと
時速50kmのスピー
ドで走ることが出来るそうです。
ちなみにカピバラという名前は南米に住むネイティブインディアンである
グアラニ族の言葉である「Kapiÿva」
という単語をもとにしており、「草原の覇者」という意味であ
ると言われています。やはり草原に住むことが多いところからそう名付けられたのでしょうか?また
その他にカピバラは
学名を「hydrochaeris(水のブ
タ)」といったり、「南アメリカのカバ」とも
呼ばれたりしますが、これらは水に潜ったり泳ぎがうまいことからそう呼ばれるようになったのだと思われます
(それにしてもブタはちょっとひどいかも)。また日本ではオニテンジクネズミと呼ばれることもあります。
カピバラは群れで生活する動物であり、普通は20〜30匹程度の血縁関係の近いもの
同士が集まった群れで暮らしています。これが乾期になって水が飲めるところが少なくなると、一か所に複数の群れが集まるようになり、100
匹以上になるこ
ともあります。
群れはボスであるオスによって率いられており、他のカピバラは
彼について行動します。他に群れにはメスと若いオス、そして子供のカピバラが含まれます。
オスのカピバラの鼻には臭いを出すモ
リージョと呼ばれる分泌腺があることが知られており、これを彼のなわばりの草に塗ることで他の
群れのカピバラなどとコ
ミュニケーションを取
ります。また彼らは様々な鳴き声や唸り声、カチカチ言うクリック音などの音を利用して意思疎通を図ることができ、意外とにぎやかな一面も
持っていたりさい
ます。
カピバラの繁殖期は主に雨季である4月から5月ぐらいで、交尾後130日間の妊娠期間を経てメスは2〜8匹(たいてい4匹ぐらい)の子供を産みます。
産まれた子カピバラはすでに毛が生えそろっていて、眼も開いています。そして産まれるとすぐにお母さんの後を付いて回ることができ、周辺にある草も
食べることができます。またそれと同時に母親からは母乳も与えら
れ、16週間ぐらいまで子供は草と母乳両方を食べて育ちます。また母乳を与えるのは母親であるメスだけでなく、群れの他のメスからももらうことがあるのが
知られています。また小さな子供は自分では泳ぐことはできませんが、川などを渡るときには大人の背中に乗っかって運んでもらいます。
そして産まれてから18か月ぐらいになると繁殖できるようになり、地域によって異なりますが1年置き、もしくは1年を通して交尾を行います。
カピバラの主
な食べ物は地面に生えている草であり、他に水の中の植物や果実、木の皮など大体1日3kgの植物を食べています。そしてカピバラは自分の糞
を
食べることが知られていますが、これは堅い草でも食べられるよう消化能力を高めるためであると言われています。また彼らは夕方から夜、朝にかけて餌を食
べ、その代わり日中ゴロゴロしながらうたた寝をしたりして過ごします。
彼らの住むアマゾンには彼らの天敵となる肉食動物が数多く存在し、オオア
ナコンダやジャガー、ピューマ、
オセロット、ワシ、カイマンなど様々な動物によって食べられてしまいます。このため野生のカピバラの寿命は4年以下しかありませんが、飼育下では最大12
年程度生きることができます。
現代の地球上ではげっ歯類の中で最大の大きさを誇るカピバラ君ですが、かつて古代に生きていたカピバラの仲間には何と体重で今のものの8倍に達するものがいたと言われていま
す。これが本当だとするとその
体重は500kgを超え、現在の平均的なヒグマよりも大きかったことになります。まさにネズミの中の王様ですね。
その巨体にカピバラ君の愛らしさを併せ持っていたのであれば、ぜひ一度お目にかかりたいものです。
カピバラのお
肉は実はけっこう美味しいそうで、それを求めて狩りが行われることもあります。また彼らは毛皮も丈夫で、非常に高価な皮製品としても使われてい
ます。またキリスト教のカトリック教会などでは一年の間に四旬節という魚以外の肉が食べれない時期があるのですが、ベネズエラなどでは何故
かカピバラは魚
であると分類されており、この期間も彼らの肉だけは食べることができます。本当にそれでいいのぉ?っていう教えなのですが、やはりこれも彼らが水の中にい
るのが多いからそうなったのでしょうか?
カピバラは南アメリカ大陸のかなりの部分に分布しており、また繁殖力の強さも相まって生息数についてもなんら問題はありません。しかし先に述べたとおり肉
や皮をもとめて狩猟の対象になったり、農園などでは家畜が食べ
る草をカピバラが食べてしまうため、家畜を守ろうとした農民に殺されてしまうこともよくあります。
ですが彼らの性格はおとなしく
ペットとしても飼おうと思えば飼うことができ、人間の手からご飯をあげたり触ったりすることもできます(なんとあの秋篠宮文仁親王もカピバラ君を飼われてい
るそうです)。なかなか個人の家で
飼うことは難しいとはおもいますが、日本の動物園でもカピバラに触れるところがありますので、機会があればぜひ一度カピバラ君に触れてみてください。ち
なみに伊豆シャボテン公園に
いるカピバラ君は冬になるとなんと温泉に入ってくつろぐそうです。
ところで動物園では若干マイナーな印象を受けるカピバラくんなのですが、先日Yahoo! JAPANで見た人気投票では名だたる動物の中でかな
り上位日
ランキングインしており、意外とすごい人気なのだなぁと感心してしまいました。しかも最近では「カ
ピバラさん」と
いうキャラクターまで出来ているそうで、
実は秘かなカピバラブームが
来ているのではないかなぁと思っちゃう今日この頃です。
執筆:2007年10月8日
[画像撮影場所] 恩賜上野動物園
旭川市旭山動物園