首のとても長い、動物園ではみんなの人気者の
キリンさんは
陸上に棲むあらゆ
るものの中で最も背の高い動物です。オスのキ
リンの場合だと
地面から頭の
てっぺんにある角の先までは4.8〜5.5mに達し、
体重は1360kgにもなり
ます。そしてこれまで見つかった中で
最も大きかったものだと、背の高さ5.87m、体重は2000kgも
あったと言うことです。「キリンさんよりゾウさん
が好き」なんていう、本人が聞いたら暴れだしそうなCMがありましたが、存在感ではゾウさんにも全然負けていません。また
メスのキリンはオスよりも一回り身体が小さく、身長だと30〜60cm、体重は
50〜100kg以上オスより小さくなります。
キリンの故郷は日本からはるか遠くの
ア
フリカ大陸で、サハラ砂漠より南の地域にひろく分布しています。アフリカ大陸にいるキリンがすべて同じなのかと言う
と、それぞれ微妙に模様などが異なっており、一般的には次の
9つの亜種が居るとされていま
す。
名前
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模様の特徴
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ア
ミメキリン
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大き
な多角形のはっきりとした斑点を持つ
分布地
域:北ケニア、エチオピア、ソマリア
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マ
サイキリン
|
黄色
い下地の上に葉っぱに似た斑点を持つ
分布地
域:中央〜南ケニア、タンザニア
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ケー
プキリン
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丸い
染みのような斑点がひざ下まで広がる
分布地
域:南アフリカ、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビーク
|
ア
ンゴラキリン
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大き
なV字型の切れ込みが入った斑点を持つ
分布地
域:アンゴラ、ザンビア
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コ
ルドファンキリン
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小さ
めの不規則な形をした斑点を持つ
分布地
域:西〜南西スーダン
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ヌ
ビアキリン
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淡い
黄色の上に大きな四角形に近い斑点を持つ
分布地
域:東スーダン、北東コンゴ
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ウ
ガンダキリン
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深い
茶色の長方形の斑点を持つ
分布地
域:ウガンダ、北〜中央ケニア
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キ
タローデシア
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星型
もしくは葉っぱに似た斑点が足全体にまで広がる
分布地
域:東ザンビア
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ナ
イジェリアキリン
|
数多
くの黄色みをおびた赤い斑点を持つ
分布地
域:ニジェール、カメルーン
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この分類は研究者によってことなり、もっと多くの種がいるという人もいれば、マサイキリン以外は全部同じ種類であるという学者さんもいて、まだ完全な決着
はついていないようです。ちなみに
日本の動物園ではこの中の3種類、アミメ
キリン、マサイキリン、ケープキリンを見ることができます。
このキリンのまだら模様は周辺の木々
の間にまぎれ込んで、敵から見つかりにくくするためのカモフラージュの役割をしてい
ると考えられています。それぞれのキリンの模様はそれぞれの個体に固有のもので、歳を取っても変化することは
なく、これをつかって各々を見分けることができます。
キリンは偶蹄目という偶数の本数のひづ
めを持つ動物の仲間で、ウシやシカ
に近い動物で
すが、彼らに最も近いと言われているのが、同じアフリカの深い森の中に棲んでいるオカピです。キリンとオカピは両方とも「キリン科」というグループに
分類
されていますが、世界的にもこ
のキリン科に属するのは彼ら2種類だけとなっています。
キリンと言う名前は、もともと中国から伝わってきたもので、「麒麟」という空想上の動物に付けられた名前でした
(ビールのパッケージで有名なあの生き物で
す)。それがいつの間にかアフリカに棲む彼らのことを指し示すようになりました。ちなみにキリンの英語は「ジラフ(giraffe)」
といい、イタリア語
の「giraffa(背の高い)」と言う単語をもとにしてい
ます。日本でも本当にいる「キリン」と伝説上の「麒麟」を区別するときに紛らわしいことから、このジラフと言う名前で呼ぶ人もいるようで
す。
またキリンの学名は「Graffa
camelopardalis 」
といいますが、このうちcamelopardalis は古代ローマ語で「ヒョウ柄のラクダ」と言う意味があります。これはおそ
らくキリンと
いう生き物を知らなかったローマ人が、自分たちにもなじみ深いヒョウやラクダでたとえたのだと思いますが、確かに言われてみればそんなふうに見えなくもな
いのかもしれません??これを受けて19世紀ごろまでの古い英語の文献では、キリン達のことを「camelopard」呼ん
でいます。
キリンは草食性の動物で、普段はアカシアなどの木やオジギソウ、アンズ等の高い部分にある枝に生えた葉や花、植物の種、果実などを食べています。彼らの長
い首と脚はより高い所に
ある葉を食べるために進化したもので、これにより他の動物たちが食べることのできない餌も食べることができ、餌をめぐった衝突を避けること
ができます。キ
リンの食事の時間は主に朝と夕方で、木の枝を口に含んで引っ張り、枝に生えた葉っぱを櫛のような歯でしごきとって食べます。
実は彼らは首と足以外にも、もう一つ他の動物よりずっと長く進化した体の部分があります。それが彼らの持つ「舌」で、上の写真にも見られ
るように、なんと45cmにも達する黒くてよく動く舌を持っています。彼
らの食べるアカシアの木には鋭いとげがびっしりと生えていますが、彼らはこの舌を使って上手く葉っ
ぱの部分だけを食べることができます。この舌は顔の周りに飛んできた虫を追い払うのにもつかわれ、同じように体の後方にいる虫は先端に房の付いた長さ
75〜100cmもあるしっぽで
追い払います。
キリンの顔のもう一つの特徴として、彼らは皆短い角を持っています。角の数はオスで4本、メスのキリンで2本となっています。メスのキリンの角には房のよ
うになった毛が生えており、一方でオスの角はメスのものよりも太く、毛がほとんど生えていません。
身体の大きいキリンはやはりその食事量も非常に多く、一日になんと66kgもの餌を食べることがあります。しかしながら環
境の変化が激しいアフリカではそ
れほどたくさんの餌にありつけない時期もあり、そういった時はわずか7kgぐらいの食事でも生きていける力も持っています。
オスとメスでは食べる葉っ
ぱの高さに違いがあり、オスは木の一番高い所にある餌を食べるのに対し、メスのキリンは彼らの胴体やひざぐらいにある、低い木の頭に生えている葉っぱなど
を食べます。また彼らは普段まばらに木が生えたところで主に生活していますが、オスのキリンはさらに植物の茂った森の奥深くに入って餌を探すことがあるそ
うです。
キリンはウシなどと同じ反芻(はんすう)動物で、一度食べた物を口の中に吐き戻して、もう一度噛み砕いてから呑みこみます。これは食べ物を少しでも柔らか
くして、消化し、吸収させやすくするためのものです。また彼らの胃もウシと同じように4つに分かれています。
彼らは大変一日の睡眠時間が少
ない動物で、平均1.9時間、短い時では10分ぐらいしか眠りません。この睡眠時間の
短さは、あまりにキリンが
眠らないため、一部ではキリンは眠ると死んでしまうという言い伝えまで出来ているほどです。また彼らは普通立って眠り、座って寝ることはほとんどありませ
ん。この時、頭を後ろ脚に乗せて、首を弧のように曲げる独特のポーズを取りますが、肉食動物を警戒するため眠りはとても浅いと言われています。
普段動物園などでキリンを見ていても彼らが鳴くところというのは、見たことがない人がほとんどだと思います。しかし、キリンは仲間とのコミュニケーション
のために多くの音を使います。その中には唸る
ような鳴き声や、いびきのような音、シューっと言う音、口笛のような音など様々な音が使われます。また近年の
研究により、彼らは超低周波数と
いう、我々人間では感知できない低い音も聞くことが出来、これもコミュニケーションの手段として使っていると言われていま
す。また子育て中のお母さんキリンも鳴き声をだして子供を探す姿がよく見られ、逆に子供たちも何かの時は「くんくん」とか「ニャーニャー」と鳴くことで母
親の鳴き声に返答します。
キリンの仲間がこの地球上に現れたのは今から
3000〜5000万年前のヨーロッパからア
ジアにかけての地域で、
体高3mぐらいのシカに似た動物から進化
したといわれています。最初の頃彼らの体は今よりもずっとどっしりしていて、首もずっと短いものでした。しかしその後進化の過程でどんどん
と首が長くな
り、
およそ100万年前ごろに現在のキリンが現れたとされていま
す。
ところで皆さんはキリンの首には一体何本の骨があるのかご存知でしょうか?実は彼らの首の骨
の数は
7本で、これ
は
我々人間をはじめとする一般
的なホ乳類と
同じものになっています。実は骨が大きく数が少ないほうが強度が増すため、彼らはこの巨大な首の骨と筋肉を使って、その長い首(
首だけで220キロ以上も
ある!)を支えていると言われていま
す。
またこれほど首が長いと、重力に逆らって頭のてっぺんにまで心臓から血液を送るのは大変で、このため彼らは通常のホ乳類よりずっと大きな心臓を持っていま
す。その大きさは心臓だけで直径60cm、重さ10kgもあり、これを使って非常に高い圧力で血液を送り出し、何とか首の上にまでめぐらせています。この
ため彼らの血圧は常に高く、数ある動物の中で
もっとも高血圧な生き物となっ
ています。(きっと朝は強いんでしょうねぇ…。)
しかしこの長い首は高い所にある餌を食べる時には便利ですが、水を飲むときには一転、ものすごく邪魔になります。この時キリンは前足を目いっぱい広げて、
長い首を地面近くにまで下げて、ようやく水を飲むことができます。この時彼らの頭は5m近い高低差を上下することになり、今度は逆に下がった頭に急激に血
液が流れ込んできます。このままでは彼らの頭の血管が高い血圧に耐え切れず、損傷したり、場合によっては破れたりしてしまいますが、キリンの頭部には
奇網
とよばれる数多くの毛細血管が網の目のように張り巡らされており、
これによって圧力の上昇を緩和することが
できます。おかげで彼らが頭を上げ下げしても、
血管が壊れることはありません。
また同様に彼らの足は常に急激な血圧がかかっていますが、ここでも彼らには圧力に対抗する機構が備わっています。彼らの足の表皮はすごく堅く、また足の筋
肉もとても発達しています。これにより、彼らは足の外から内に向かう力をかけることができ、高い血圧によって血管が膨張しそうになっても抑え込むことがで
きます。従って彼らの足に必要以上の血液が流れ込むことはなく、元気にサバンナを駆け巡ることができます。この方法は我々人間の世界でも注目を浴びてお
り
、何とあのNASAが宇
宙飛行士の着る宇宙服に同じ機構を応用しているそうです。
またキリンが首の長いことによる、意外な弱点の一つに「雷」があります。つまり周りに自分より、背の高いものがないため、彼らの長い首は避雷針として働
き、雷を引き寄せてしまうというのです。それでも彼らが棲むアフリカではもともと雷雲が発生することは少なく、あまり問題とはなっていなかったのですが、
近年世界各地の動物園で飼われるようになると、あちこちで雷によるキリンの被害が報告されるようになりました。最近では1996年に動物園で飼われてい
た、背の高さが5.5mもあるキリンが雷に打たれて死んでしまうという事件も起こっています。
キリンは他の動物と比べてあまり水を必要とせず、そのため水を飲む回数も少ないという特徴があります。従って彼らは乾季にも強く、ヌーなどのように水辺を
求めて長い距離を移動するということはありません。
kキ
リン関連のトピックス
横浜市立野毛山動物園で
昨年6月8日に誕生したアミメキリンの「ハヤテ」が、5月26日から群馬サファリパークに繁殖を目的として移されることになりました。野毛山動物園は5月
10〜25日の間ハヤテのさよならイベントを行うということです。
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[画像撮影場所]
多摩動物公園
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多摩動物公園
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恩賜
上野動物園
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