彼らは普段一匹で行動し、それぞれの個体は
なわばりを持って生活していま
す。
レッサーパンダは主に夜行
性で、夕方から夜、明け方にかけてが最も活発で、昼間はほとんど寝て過ごします。彼らの一日は毛
づくろいで始まりますが、また他にも木や岩に背中やお腹をこす
りつける行動をとることが知られています。それが終わるとなわばりを見て回り、ポイントとなる木などに肛門の周辺にある分泌腺をこすりつけたり、尿をかけ
たりすることで自分の臭いをマーキングし、他のレッサーパンダに存在を知らせます。
動物園などで見るレッサーパンダは檻の中をせわしなく歩きまわっている姿がよく見られますが、よたよたとどことなく頼りないところがあるものの、結構なス
ピードで走ることもできます
。
彼らは歩くときに足の裏全部を地面につけます(遮行性)が、
これは動物の中ではかなり変わっています。そしてそれ以上に
彼らは木登りが得意で、枝から枝へと飛び移ることができ、昼間
寝る時もよく木のてっぺんの一番高いところで葉の
影に隠れてだら〜っと体を伸ばして睡眠を取ります。その他にも木の穴や岩の割れ目の中で、丸まってしっぽで顔を隠しながら寝ることがあります。そしてまた
食事を取るのも、もっぱら木の上です。
パンダという名前が指し示すとおり、彼らの主な食べ物は
笹ですがその他にも他の植物の
葉や果実、花などを食べます。また時には植物性の食べ物以外も食し、
鳥の卵や雛、小型のげっ歯類(ネズミなどの仲間)を食べることが知られています。野生のレッサーパンダは基本的には植物を食べて暮らしていますが、動物園
で飼育されるものは比較的簡単に肉を食べるようになるそうです。
彼らは
笹などを食べるときは前
足を使って口元に持って行って食べることが知られており、
水を飲むときも前足を水の中に入れてそれ
をなめます。実は彼らや同じ笹を食べるジャイアントパンダは
手首の骨(種子骨)が発達し
てできた6本目の指を持っており、
これを使って食事のときなどにより簡単に
物をつかむことが出来るそうです。また彼らのあごや歯は比較的発達していて強い構造になっており、物を噛み砕くのに適した構造をしていま
す。
彼らは実は
かなりの大食いで
あることが知られており、
一日
に食べる餌の量は自分の体重と同じぐらい(5kg以上)にも
なります。彼らがこれほどの餌を必要
とするのには理由があって、レッサーパンダの消化能力はそれほど強くないため、たくさんの餌を食べて少しでも多くの栄養を取ろうとしているのだと言われて
います。このため彼らは起きている時間のほとんどを食事に費やします。(
このせいか私がよく行く上野動物園の
レッサーパンダのテンテン君も、ずっとご飯の
笹をモクモク食べていて、中々お顔を見ることができません(悲))
レッサーパン
ダの主な天敵はユキヒョウやイタチの仲間であるテンで、彼らは危険を感じると木や岩の上に駆け登って逃
げようとします。しかし敵からいよいよ逃げられ
ない場合は
二本足で立ちあがって威嚇し、さらに鋭い爪を使って攻撃をしてきます。この爪は非常に強力な
武器で標的に対してかなりの傷を負わすことができます。(
もし野生のレッサーパンダに出会っ
て彼らが立ち上がってきた時にはくれぐれも注意してください。)また周辺を見渡すときにも彼らは二本足で立ちあがることがありますが、
最近動物園で話題になっている二本足で立
つレッサーパンダはこの習性が元になっています。
レッサーパンダは普段あまり鳴くことはありませんが、時々さえずるような鳴き声や口笛を吹くような音を出します。仲間同士のコミュニケーションを取るとき
には頭を上下、もしくは左右に振ったり、顎を打ち鳴らしたり、時には前足を広げながら二本足で立ちあがることがあるそうです。
レッサーパンダはもともと今よりも広い地域に住んでいたことが知られており、インドのもっと西の地域や、中国のより北東地域にも居たことが分かっていま
す。また
数百万年前に生きてい
たレッサーパンダの先祖は東は中国から西はなんとイギリスに
まで分布していたことが化石から明らかになっています。また最近に
なてっ
北アメリカからもレッサーパンダの仲間であると思われる化石が見つかっ
ており、ユーラシア大陸以外の大陸にも及ぶ過去における彼らの生息地の広さが
話題になっています。
レッサーパンダの生息地の一つである中国の一部の地域では、伝統的に結婚式で新郎がレッサーパンダの毛皮を身に付けます。またレッ
サーパンダのしっぽから出来た帽子は「幸運のお守り」として新
婚のカップルに好んで使われています。しかしながらこのような毛皮やふさふさしたしっぽを求めた
密猟が各地で行われており、
レッサーパンダの生息数の減
少に大きな影響を与えています。
現在どのくらいのレッサーパンダが生息しているのか生息な数は分かっていませんが、
約2500頭程度の大人のレッサーパンダが野生にいるのではないかされ
ており、一説には
こ
の50
年間で40%のレッサーパンダが地球上から姿を消して
しまったと言われています。毛皮以外にも密猟されたレッサーパンダは、世界各地の動物園に捨て値に近い値段で不法に売られていることがわ
かっています。また近年アジアの国々
の近代化と人口の増加におり、
彼
らの住む森が姿を消してしまっていることも、深刻な問題となっています。森林が道路や町などで分断されてしまうと、わずか
の個体からなるグループが各地の森でで孤立することになります。これは繁殖を行う上で非常に不利になってしまい、生息数の減少により拍車をかけてしまいま
す。更に各地でウシなどの家畜によってレッサーパンダの食べ物が食べ尽くされることが相次いでおり、それによる
食糧不足も大きな問題となって
います。
これを受けて
レッサーパンダが
生息するすべての国では彼らを保護しており、レッサーパンダを狩ることを法律で禁じています。また
国際自然保護連合
(IUCN)はレッドリストの中でレッサーパ
ンダを絶滅の恐れのある動物として指定しています。
そしてまたレッサーパンダの置かれた状況は中国などに棲むシセン
レッサーパンダよりも、ヒマラヤなどに棲むニシレッサーパンダの方が深刻であると言われています。
レッサーパンダは一度の出産で生まれる子供の数が少なく、繁殖力がそれほど強くないため、一度減ってしまった生息数はなかなか元には戻りません。従って
レッサーパンダの棲む各国での保護区の作成などの計画的な保護活動と、
動物園などでの繁殖計画が彼らの未来を守る上では非常に重要
となっています。
現
在世界中ではおよそ650頭のレッサーパンダが飼育されてお
り、日本でもおよそ3分の1にあたる230頭が動物園などで
元気に飼われています。
執筆:2007年10月21日(最新改訂2008年2月8日)
[画像撮影場所] 恩賜上野動物園