シロテテナガザル君は日本の動
物園でも有名な、
その名の通り
手首から先が白くなった長〜い手
を持つおサルさんです。
シロテテナガザルは中国南部やミャンマー東部、タイ、マレーシア、そしてインドネシアのスマトラ島など、南および東南アジアの
ジャングルの木の上に生息し
ています。テレビなどでその長い手を器用に使って、高い木の枝から枝を飛び移るようにして移動する姿を見た人も多いかもしれません。
彼らの毛の色は同じ種類のおサルさんなの?と言いたくなるぐらい個体によって差があり、
ほとんど黒に近いものから焦げ茶色のも
の、そしてもっと明るい色の
茶色をしたものまで様々です。(右の写真に写っている2匹もこれだけ色が違っていながら同じシロテテナガザルの仲間です)しかしながらこれ
だけバリエー
ションがありながら
、トレード
マークである手足の先だけはどのシロテテナガザルも必ず白く、それに加えて顔の周りにも白い毛が生えています。
ちなみにこのカラーバリエーションはオスもメスも同じで、体の大きさもそれぞれ
体重5.5kg程度であること
から、
外から見てシロテテナガ
ザルのオスメス
を見分けるのは、人間である我々にとってはほとんど不可能です。またテナガザル全般に見られる特徴として、彼らには人間と同じように尻尾が
ありません。
シロテテナガザルの喉のところには袋がありますが、彼らはこれを使って
大変大きな鳴き声をだすことができるそ
うです。
シロテテナガザルはかなりグルメなおサルさんで、食べ物の豊富なジャングルの中でも、
食べるのはほとんど果物だけに限られており、その中でもイチジクのように当
分
の高い実を好んで食べます。ごくごくまれに葉っぱや木の芽、昆虫なども食べますが、ほぼ気まぐれのようなものです(我々で言うところの珍味にあたるの
でしょうか…?)。彼らは普段餌の豊富な木の上から下りてくることはまずありませんが、たまに地面に降りてきたときに短い距離であれば何と二本足で歩くこ
とができるそうです。
シロテテナガザルは
1組の夫婦
とその子供たちからなる、家族単位の群れを作ります。シロテテナガザルの夫婦は一部の例外を除き、
ほとんどが同じ相手と一生を過ごします。
それぞれの夫婦は独自のなわばりを持って、生涯を通じてそこで生活し、またこのなわばりに他のサルが入ってくると、夫婦ともに大声をあげて追い出します。
シロテテナガザルには特定の繁殖期はなく、一年中繁殖を行うことができ、
メスは7か月の妊娠期間を経て、通常一回の出産で一匹だけ子供を産み落とします。
産まれてくる子供の体重はおおよそ300g程度で、その後お母さんの母乳で
育てられます。そして2年ぐらいで乳離れを迎えますが、その後も8歳ぐらいで完全に大人になるまで親の群れの中で暮らし続けます。子供が乳離れをするとお
母さんは新たな子供を産みますが、
生まれた子供の世話をお父さんザルや年上
の兄弟姉妹が手伝うこともあります。
野生におけるシロテテナガザルの寿命はおおよそ
25年であるといわれています
が、飼育下のものでは
最大44歳ま
で生きた個体が知られているそうです。
シロテテナガザルは仲間同士のコミュニケーションにその大きな鳴き声を使いますが、その他にも顔の表情で意思疎通ができると言われています。また上の写真
のようにサル独特の互いの体を毛づくろいすることによっても、 コミュニケーションを行っていると言われています。
厳しい自然界にあって驚くべきことではありますが、これまで
シロテテナガザルが他の動物によって食べ
られたという事例は報告されていません。この理由の一
つには彼らの棲んでいる場所が大きく関係しているようです。アジアの代表的な大型の肉食動物と言えばやはりヒョウや
トラで、もし
彼らに出会ったらシロテテ
ナガザルは間違いなく殺されてしまいます。しかしシロテテナガザル達はジャングルの中でも最も木の高いところで生活しており、
このような場所では木の枝が
下の方と比べてとても細くなっていて大型の動物が乗ると簡単に折れてしまいます。従って
シロテテナガザルが居るところまでは、
ヒョウ達のように体重の重い
肉食動物は枝を伝って行くことができず、ほとんど天敵に襲われる心配がないというわけなのです。こういったことからシロテテナガザルを唯一
襲うことができ
る可能性があるのは
ワシやタカの仲
間だけであるといわれています。
というわけで自然界にはほとんど敵のいない彼らですが、それにもかかわらず
シロテテナガザルには現在絶滅の危険性があるとされています。その原因にはいくつ
か
のものが挙げられますが、まず彼らはいくつかの地域で人間によって食用のために狩られています。またアジア諸国ではサルを飼うことが人々に人気であるた
め、特にかわい
い子供のシロテテナガザルがペット用に生け捕りにされたり、その時に親ザルが殺されたりします。また輸送方法が完備されていない場合、目的地へ輸送中に劣
悪な環境に耐えられず、死んでしまうサルもいます。
しかしこういった要因は小さなもので、もっとも深刻な影響を与えているのが、アジア各地で行われている
森林伐採です。これにより
現在シロテテナガザルの棲
む森は急速にその面積を減らしており、その他のジャングルに棲む動物たちと同様に彼らのすみかも失われつつあります。
森林伐採によるシロテテナガザルの減少を防ぐため、現在彼らの棲む国々の多くでは
保護区や
国立公園を作ってなんとか生息
数を守ろうとしていますが、あまり目立った効果を上げてい
ないのが現状のようです。このため
ワ
シントン条約で
は極めて厳重な管理が必要な動物として、附属書Iというリス
トに掲載され、シロテテナガザルの商取引は完全に規制されています。
執筆:2008年1月14日
[画像撮影場所]
恩賜上野動物園
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東武動物公園
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