カリフォルニア アシカ California Sea Lion

頭脳明晰、芸達者
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アシカといえば彼ら、というぐらい動物園でおなじみのカリフォルニアアシカ君です。 しかしありふれているといってもあなどる事なかれ、彼らはホ乳類の中でも非常に高い知能をもっており、イルカさんと並んで高度な芸を難なく覚え て披露する ことができます

カリフォルニアアシカはその名前の示すとおり、アメリカ合衆国の西岸カリフォルニアやワシントン州などの沿岸を中心に、北はカナダ、南はメキシコまで分布 しています。特技はなん といっても泳ぎで、ひれ状になった前足を翼のように使って水 の中をたくみに動き、イカや魚などを食べています

カリフォルニアアシカはオスの体が大きく、大体全長2.2m体重275kgになりますが、 大きなものでは全長2.4m体重390kgに達することも あ ります。これに対してメスは二回りほど小さく、全長1.8m、体重90kg程度にしかなりません。オスとメスとでは体も色も異なり、オスは茶色いもし くは褐色をしているのに対し、メスはそれよりも暗い色をしています。またそれぞれ背中と比べておなかの方の毛皮はやや明るい色をしています。オスはメスよ りも頭の てっぺんが出っ張っているので、それを元に見分けることもできます。

彼らはかなりの時間を水の中で過ごしますが、泳ぎがたくみな割りには岸から16km以上離れることはほとんどありません。暖かい時 期には水辺に多くみられ、 水に潜ることが多くなりますが、寒くなると浜辺や傾斜地に上って日なたぼっこをして体を温めます。また頭のよい彼らは人工物をあまり怖がることはなく、桟 橋や水面に浮かぶブイの上で過ごすところが現地ではよく見られます。これに関しては人の作ったものの近くでいることで、彼らは天敵である シャチやホ オジロザメ、オオメジロザメなどから逃げるこ とができるともいわれています。

飲まず食わずのなわばり争い
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カリフォルニアアシカの主な繁殖地は南カリフォルニア沖の島々や、メキシコ沿岸といった南の海で、繁殖期になると多くのカリフォルニアアシカたちがこれら の海域に集まっ てきます。5〜7月の繁殖期になるとオス同時は互いに縄張りを巡って争い、勝った オスはその中にいるメスと交尾をすることができます。このときオ ス同士の争いが 致命的なものになることはほとんどなく、たいていは相手を脅したり、にらみつけたりすることで優劣が決定されることがほとんどです。しかしなわばりを守る 間オスたちは海に入って餌をと ることができないため、飲まず食わずで周囲のメスが発情するのを待ち続けます。

体の大きなオスはなわばりを巡る戦いに勝ちやすいことに加えて、より多くの脂肪を体に蓄えることで、体の小さいものよりも長期間なわばりに居座り続けるこ とができます。しかしそうは言ってもメスを待ち続けることができる期間は最大でも27日ぐらいで、普通は2週間ほどの間に交尾を行う必要があります

なわばりの主であるオスは複数のメスと交尾することができ、このような集まりのことをハーレムびます。中には最大で 16匹ものメスが1匹のオスのハーレムの中にいたケースも報告 されています。

メスのカリ フォルニアアシカの妊娠期間は約1年間で、通常一頭の非常に 濃い色の焦げ茶色の毛皮をした子供が生まれてきます。母親は水中、陸上の両方で子供を産むことが できます。生まれたばかりのカリフォルニアアシカの体の大きさは体重は5〜6kgで、全長は75cmぐらいとなって います。生後1か月ぐらいすると子供の毛皮はずっと明るくな り、さらに4〜5か月ぐらいで大人のものと同じ毛色になります。子供たちは半年から一年ほど母親の母乳で育てられますが、生後2か月ごろから徐々に泳ぎ方 を教わり始め、自分で餌をとる方法も覚えます。授乳期の間メスは最初の8日間は子供のそばを離れず世話をしますが、その後は2〜4日海で自分の餌を食べ、 その後1〜3日陸で授乳をするというサイクルを繰り返し続けます。また社会性の高い彼らの中には自分の子でなくても、親を亡くした子供の面倒をみるものも いるそうです。そし て子供たちは独り立ちしたあと4〜5歳ぐらいで性的に成熟し、繁殖が行えるようになります。

繁殖期のあと、メスのカリフォルニアアシカはそのまま南の海域にとどまり続けますが、オスと新しく生まれた子供のアシカはアメリカ合衆国北部や、カナダま で北上し、そこで冬を過ごします。この間オスたちは群れを形成することがありますが、その中での優位性は体の大きさで決定されると言われています。

野生におけるカリフォルニアアシカの寿命は最大で17年ほどですが、飼育 下においてはそれより長生きする傾向があるようで、31歳まで生きたものも知られ ています。また彼らの寿命は年輪のようになった歯の断面の輪の数を数えることで知ることができます。

複雑なカリフォルニアアシカと人間の 関わり
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カリフォルニアアシカの好物は魚ですが、その中でもメルルーササケといった魚が特に好ま れ、動物園では一日に10kgぐらいの餌が与えられます普段の 彼らの泳ぐスピードは時速10kmぐらいですが、短い時間で あれば時速40kmものスピードで泳ぐことができ、平均30〜100m最高で 196〜274mもの深さにまで潜って獲物をとることができます

大部分は海でみられる彼らですが、一部のものは河口近くにもすんでおり、主に上ってくるサケの他、シロチョウザメなどを食べて暮らすこともあります。また 海では魚の他にもウミガラスなどの鳥を食べることもあるそうです。彼ら は頭がよく、仲間と群れで狩り をすることもあれば、時には大きな魚を群れをイルカやサメ、ウミドリと協力して襲うこともあります

しかし一方で彼らは人間の網にかかった魚を盗んでいくことが多く、そのため漁師からは目の敵にされ、たびたび射殺されています。また川を上ってくるサケを 大量に食べることから、近年のサケの減少には彼らの影響が大きいのではないかと言われており、漁業資源に対する影響も懸念されています。

カリフォルニアアシカは現在アメリカの法律で保護動物に指定されているのですが、現在全世界では20万頭ものカリフォルニアア シカが生息していると見積もられており、さらにその数は年に5%の割合で増加しているといわれています。そのこと自体は大変喜ばしいことなのですが、それ と同時に上で述べたような魚をめぐった周辺の人間との競合が問題になっています。このため、2007年には法律にカリフォルニアアシカの生息数がサケの漁 獲量に大きな影響を与えるレベルにまで増えすぎたときは駆除してもよいという修正が加えられました。また漁獲資源だけでなく、人間のいるところのすぐそば に棲んでいる彼らが直接人間に危害を加えるケースも報告されており、これまでにもダイバーが傷つけられた事例が知られています。しかし被害を受けるのは人 間の方だけではなく、カリフォルニアアシカたちも釣り人が捨てた釣り道具に絡まってしまい、そのまま死んでしまうものが後を絶ちません。

このように実際の生息地では何かと問題の残っている彼らと我々人間との関係なのですが、動物園などではかなり高度な芸をこなすことができ、イルカと並んで スターアニマルの一つとなっています。ボールを鼻先で受け止めてバランスをとるという芸は有名ですが、その他にもはしごを駆け上ったり、ラッパを音楽を奏 でるように吹くこともできるそうです。

このような芸は彼らの知能が非常に高いため可能になっているのですが、このような能力はエンターテイメントのみならず、軍事目的にも利用されており、アメリカ海軍では実際に実用化されていま す。また先に述べたとおりカリフォルニアアシカの遊泳能力は人間のダイバーを遙かに上回っており、我々では不可能な300m近いところへの 潜水や、時速40kmでの遊泳も可能で、人間には行えない作業も彼らなら難なくやってのけることができます。彼らの主な任務としては海中に浮かぶ爆薬(機 雷)を探したり、海中の設備の簡単な補修などがあり、その他にも自軍の船に近づく敵のダイバーを発見してその足にロープのついたフックを引っかけて相手の 動きを止めるといったこともできるそうです。

また彼らの人間とのコミュニケーション能力の高さは、子供たちの教育にも有効であるといわれ、現在各地でカリフォルニアアシカを用いた教育プログラムが施 行さ れているそうです。

執筆:2008年5月20日

[画像撮影場所] 
東山動植物園
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