ホオジロザ メ Great White Shark

ホオジロザメ画像
Copyright Carl Roessler
[海洋有数のハンター]
カッコいいですね〜、ホオジロザメ!私は動物の中ではシャチに 並んでホオジ ロザメが好きです。

そんな手前味噌な話題は置いといて、この種はジンベイザメやウバザメのようなプランクトンを主食とするものを除く、一般的な魚などの大型のものを食べるサメの中 では最大のものです。平均の大きさは3.7−4.9mぐらいですが、記録上最も大きかったものは7mに達し、体重 は3.2tもあったといわれています。他のサメでも同じことは言えるのですが、ホオジロザメはメスのほうがオスより大きくなっています。更 に生まれたばかりの子供ザメでも 1.5mもあります。まさにキング・オブ・軟骨魚類?です なぁ。

ホオジロザメの最も特徴的な部分といえば、3000本以上の歯が生えた巨大な口で しょう。大阪の此花(このはな)区にあるUSJには映画"Jaws"に出てきたサメの模型がありますが、私は感動してその口の中に頭を突っ込んだ記憶があ ります。(当 時すでに20歳過ぎてました…(滝汗))ホオジロザメの歯は全て鋭い三角形をしているのですが大きさは7.5cmにも達し、 さらにエッジ部分が細かいのこぎり状になっていて獲物を引き裂くのに都合よく出来ています。サメの歯は実は我々の物とは大きく異なっており、もともとはう ろこだったものが変化したものです。ですから、サメの歯は口の中に何列も並んでいるのです が、外側の歯が傷ついたり、磨り減ったりすると直ちに次の列の歯に取り替えられ常に新しい歯が生え揃っています。(コンビニの冷蔵庫の中の 缶ジュースの補充方法と一緒)完全に歯医者いらずですね。

彼らは狩りをするときにはまず獲物の体を一噛み して、出血多量によって獲物が弱るのを待った後に止めを刺します。ホオジロザメは獲物を食べるときにはかんで食べることはせず、手ごろな大きさ に切り裂いて丸呑みしてしまいます。サメ全般のお食事の量は一週間に体重の1 −10%ぐらいを食べるといわれていますが、これにもとづくと体重2tのホオジロザメが一日に食べる量は30kg弱ぐらい。思ったよりも少ないかも?食べるものは若い固体では主に魚やエイ、他の 種類のサメで、大型のホオジロザメになると鰭足類(アシカやアザラシ)やイルカなどの小型のハクジラ類、ラッコを含む海生哺乳類やウミガメ等を食べるよう になります。ハンターとしてのイメージが強いホオジロザメですがその辺に浮いている動物の死体なども食べており、好き嫌いはありません。

よく知られているようにサメは何億年も前からほとんど姿を変えていず、様々な環境に適することが出来るように進化しています。特に獲物を取るために色々な 能力そなわっており、前述の歯のぎざぎざ構造もその例の一つです。他に彼らの体色は上側がグレーになっていますが、これはホオジロザメは狩りをするときに 主に下から襲うため、上にいる獲物からは保護色になります。

ホオジロザメが普段泳ぐスピードはそれほど速く ありませんが、獲物をとるときなどは最 大時速40kmを超えるスピードで泳ぐことが出来るといわれています。彼 らは一般的な魚と違い、空気の入った浮き袋を持っていません。そこで、なるべく浮力を稼ぐため油の多い巨大な肝臓を 持っているのですが、それでも体の比重は海水より重く、常に泳ぎ続けていないととたんに沈んでしまいます。また実は彼らは後ろに泳ぐことが 出来ないうえ、ひれが他の魚ほど柔軟に動かないため急に止まることも出来ません。ですから彼らが後方に進むときには、一旦スピードを落とした後に重力を 使って180度前後方向に回転して、仰向けにひっくり返って体の向きを変える必要があります。

ホオジロザメ画像
Copyright Carl Roessler
特に彼らの能力で優れているのはその嗅覚で、とりわけ獲物の出 す血の臭いに敏感です。一説には 100リットルの水の中に落ちた一滴 の血をかぎ分けるといわれています。ホオジロザメは鼻先にある鼻孔(左図参照)で臭いをかぎます。私なんかは海の中に住んでいるのに鼻の穴 なんか持ってたら、水が入ってきたときに『つ〜ん』となっちゃうんじゃないの?と考えてしまうのですが、サメの鼻孔は我々の物とは異なり呼吸には使用せ ず、臭いを感じ取るセンサーとしてしか使用されません。更にホオジロザメは水圧の変化なども感じ取ることが出来ますが、他の生物と一線を画しているのは水中で他の生き物が出す微弱な電気を察知でき る能力が備わっていることです。電気を出す動物といえば電気ウナギなどが有名ですが、我々のような生き物でも筋肉を収縮させるときなどに体 内で微弱な電気を発しており、ホオジロザメはそれを察知して獲物を襲います。サメは体の中にあるロレンツィーニ瓶嚢と呼ばれる器官で電気を感じ取ります が、サメはこれを獲物をとるときだけでなく自分の周辺の地磁気を察知することにも使用 し、自分の地理的な位置を割り出すことができ、この器官はいわゆるナビゲータとしても役立っているるとも言われています。それに対してホオ ジロザメの聴覚や視覚はそれほど良くないといわれてきましたが、最近の研究では目はそれほど悪くないという説もあります。また、ホオジロザメはサメの中で唯一水面外に顔を出 すことが出来、この行動は水面にいるアザラシなどを探すためだとも言われています。

最近になって報告されたものによると、ホオジロザメは餌をとるときに水面の上に4m 以上もジャンプすることがわかりました。これはアザラシなどのスピードの速い獲物が水面近くを泳いでいるとき、それに下から噛み付こうとし たホオジロザメが勢いあまって飛び出してしまうためだといわれています。結構あっちこっちでこのジャンプの写真は見ることが出来ますが、一見の価値ありで す。まさにホオジロザメに対するイメージが変わること間違いありません。海水浴でのんびりしてて目の前にいきなりあの巨体が飛び出してきたら…。この世の 終わりに間違いないでしょう…。

[ハンターになるには生まれてくるのも大 変]
ホオジロザメは世界中の温帯も しくは亜熱帯の水域に住んでおり、日本近海でもしばしば目撃されています。暑すぎず寒すぎない場所を好み、意外にデリケートなのかもしれま せん。彼らは集団で行動することは少なく、数平方キロメートルの海域に一匹程度しかいないとも言われています。地方によってオスとメスの性別ごとに生活す る場所が異なり、住み分けがされていると言われています。また大きさによっても同様の住み分けが行われているのではないか?とも言われています。また季節 によって住む地域が変化し、それには水温と餌の供給量が関わっているといわれています。特にメスは秋の産卵の時期になると暖かい水域へと移動していきま す。

ホオジロザメの繁殖に付いては分かっていない部分が多いのですが、一般的な魚と異なり体の外で受精を行うのではなく、メスの体の中で受精を行って、さらに卵を孵化 させた後に大きくなった子供を生み出すという卵胎生という繁殖形態をとるいわれています。ホオジロザメの子供は生まれたばかりのものでも 1.5mもあります。驚くべきなのは、メスのお腹の中にはもともとたくさんの受精卵があるのですが先に孵化した子供はまだ孵っていない受精卵 や、後から孵化した小さい兄弟を食べてしまうということです。子供同士を振るいにかけ、強い個体を生むという厳しい生存競争が生まれる前か ら繰り広げられており、最強のハンターとして生きるには非常に厳しい試練が与えられます。

このサメの寿命がどれぐらいのものなのかは観察するのが難しく、良く分かっていませんが一般には20年程度、一部では100年以上生 きるという説もあるら しいです。

[顔で損するタイプ?]
世界中でどの程度の数のホオジロザメが生きているのかは、統計 的なデータが少なく良く分かっていませんが、一般には数が減ってきており絶滅の危険性があるのではないかといわれています。オーストラリアなどでは実際に 絶滅危惧所としてリストアップされています。ホオジロザメはフィッシングで人気があり、その身はフカヒレなど食用として用いられることもあります。でもホ オジロザメのフカヒレはあまり高級ではないそうですが…。

ホオジロザメすずめっち画像
ホオジロザメというと人食いざめというイメージが強いですが、人を襲う件数はそれほど多くなく、ホオジロザメに教われる件数は年間で30- 50件、死に至るのは10−15件ぐらいだといわれています。蜂に襲われて死んでしまうほうがはるかに数としては上回っています。また、ホ オジロザメは意図的に人間を食べようとすることはないといわれており、多くの場合では犠牲者が食べられてしまうことは無く、死因は出血多量か、ショック死 によるものです。人が襲われる理由はサーフボードに乗ったサーファーの姿がアザラシに似ていたり、人間が縄張りに入ってしまったり、船やその他の機械が出 す磁場が彼らの感覚を狂わせるためだと考えられています。ですから必要以上に彼らを怖がる必要はありません。まあ、でも一緒のプールで泳ぐのは勘弁してほ しいですが…。

彼らが怖がられてしまう最大の理由はそのお顔にあるのかもしれません。 だって明らかに怖いもんねぇ…。でもあの流線型の引き締まった体はすっごく魅力的で(こう書くと、響きが怪しいかも…)滅茶苦茶かっくいいです。TVや映 画などで人気者の彼らには我々の方が正しい接し方をして、上手に共存をはかる必要があるんじゃないでしょうか。

[写真提供]  Carl Roessler 様 (オーストラリアのダイバーさん)

Carl Roessler 様 サイト


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