#4 トラによる奇妙な死の謎

トラ画像
 トラはアジア全土に分布しており、野生での生息数は減少し絶 滅の危機があるといわれています。しかし、現在では必ずといっていいほど、どの動物園でも飼育されており、その雄雄しい風貌から子供達の人気者になってい ま す。

 中国などではトラは昔から馴染み深い動物で、様々な故事説話に登場しており、風水などでも四神の一つである西方の守護神として『白虎』が有名です。しかしなが ら、アジアから遠く離れたヨーロッ パの人々にとって、生きたトラを目にすることは交通手段が発達する近年までほとんどありませんでした。しかし最近になって、このことに関す るある興味深い事例が報告されています。

 イギリス西部コッツウォルズ地方の南西部にはマームズベリーという小さな村 があります。人口わずか5000人程度のこの村は丘陵地に位置していますが、美しい石造りの家があり、羊の群れが飼われているなど、典型的なイギリスの風 景が広がって います。またこの村は歴史が古いことで知られており、荘厳な教会や時計台などを見ることが出来ます。

墓石画像
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 このマームズベリーには『マーム ズベリー大修道院』という古い修道院がありますが、そこにある墓石の一つに非常に奇妙なものがあります。この墓石はハンナ=トゥイノイと呼ばれる 女性のもので、彼女は『ホワイトライオン』という古い宿屋で働く使用人でした。この墓石には彼女は1703年10月23日に33歳で死去したと記されています。

 更にこの墓石には彼女の死因についての記述もあるのですが、そこには次のように書かれて います。

『獰猛なトラが、命を奪った』

 この記述からすると彼女はトラに襲われ命を落としてしまったというこ とになります。しかし、歴史をたど るとイギリスにおける最も古いトラの飼育の記録は彼女の死後40年以上経っ た1745年となっています。この記録は見世物としてイギリスに持ち込まれた一匹のトラについてのもので、イギリスにおける唯一のトラであるという宣伝がなされていました。

 この宣伝がもし正しいとするならば、一体どうしてイギリスの片田舎に居た使用人で ある彼女が、遠く離れたアジアの生き物であるトラによって殺されてしまったのか非常に大きな謎となっています。私達が知るずっと以前、す でにトラはイギリスへと持ち込まれていたのか、それとも別の獣によって彼女は殺されてしまったのか。残念ながら今となってはそれを知ることは出来ません。