ジャクソンカメレオン Jackson's Chameleon

[三本角のにくいやつ]ジャクソンカメレオン写真1
ジャクソンカメレオンは額と鼻先から突き出た三本の角が非常に印象的な アフリカ原産のカメレオンです。このごつい顔つきは、私にはなんかもうRPGの中ボスにしか見えませ ん。
 ジャクソンカメレオンの大きさは大人で大体15〜30cm程度。シンボルである三本角ですが、オスの物は非常に発達 しているのに対して、メスはまったく失われているか、あっても短く個体によっては3本のうち一本しかないものもいます。
 ジャクソンカメレオンの眼は非常に大きく外に突き出していますが、瞳の部分以外は体と同じ皮膚で覆われています。こ の眼は左右独立に動かすことが出来、180度ぐるっと回転します。また、 瞳にあるレンズの曲率を自由に変えることで、目的の物体を拡大して見るという望遠カメラ的な役割も持っています。
 その他の特徴として、頭の後ろに小さなたてがみがあり、背筋に沿って山形の小さなとげがずらっと並んでいます。ま た、足は 他のカメレオンや鳥類などで一般的に見られる 、対指足という木の枝をつかむのに適した物になっており、足の外側に向いて三本、内側に向いて二本の指がついています。また太い尾は木に巻き付けやすいよ うになっており、樹上生活に適応しきっています。
 カメレオンといわれてすぐ頭に思い浮かぶのは、周りに合わせて体の色を変化させるという性質ですが、このジャクソン カメレオンもその例に漏れず状況にあわせて肌の色を変化させることが出来ます。普段葉っぱの生い茂った木の上で生活している彼らの体色は明るい緑色をして いますが、ストレスを受けると黒といっていいほど黒味がかった緑になります。変温動物である彼らは、朝になって日が昇ると体を光の方向に向け、平らにした 上首を伸ばして少しでも日の光に当たる面積を増やそうとします。
 自然界にいるジャクソンカメレオンには天敵が多く、鳥やヘビ、トガリネズミや他の種類のトカゲなどに狙われます。こ のような敵が近づいたときには、ジャクソンカメレオンハ防御行動として木の上でじっと静止し、くすんで茶色がかった色をすることによりなるべく外敵から見 つからないようにします。

[時 速26kmのお食事]
 ジャクソンカメレオンの主な食べ物は昆虫や蜘蛛などです。 獲物をとるときには、まず両方の眼を独立に動かし獲物の姿を探します。視界に獲物の影が入ると、両方の眼の焦点を獲物にあわせて、更に眼を細かく揺り動か すことにより正確な距離感を割り出します。獲物の位置を確認した後、 体長の1.5倍もある舌を16分の1秒という速さで打ち出し、舌の先に付いた粘っこい唾液に獲物をつけて口の中に引き寄せます。 30cm程度の個体の場合、 この打ち出される舌の速さは時速26kmにもなり、オリンピック100m短距離走選手並みのスピードに達します。 樹上生活をする彼らは水を飲むために地上に降りることはせず、木の葉の上にたまった滴をなめて水分を得ます。

[三又大将の 激しい恋愛]
 ジャクソンカメレオンは交尾を行うときに一見威嚇行動に見えるしぐさを相手に見せる ことで知られています。具体的にはオスとメスがであうと、まずオスがのどを膨らませ、体の色を変えたり、前足を相手の方に向けて振り上げるような行動をと ります。これは普段ジャクソンカメレオンが行っている威嚇行動とにており、オスによってこのジェスチャーを送られたメスは、求愛を受け入れない場合、オス と同様の強い威嚇行動をとります。もしメスがオスの要求を飲む場合には、まったく何のジェスチャーをとらないか、もしくは弱い威嚇行動をとりその後めでた く結ばれます。
 メスの発情 期は一般におおよそ11日間程度続きますが、この間にメスは複数のオスと交尾をします。ですが、一日に二度以上同じオスを交尾をすることはありません。 ジャクソンカメレオンは 爬虫類では珍しく、卵生ではなく胎生で子供を産みます。交尾後約190日の妊娠期間を経て、メスは木の上にゼラチン上の卵嚢で包ま れた子供を生み付けます。何故か出産は朝に限られており、木の上に生みつけられた子供はすぐに目覚めると卵嚢を突き破って外に出てきます。生まれたての様 態の大きさは約5.5cmしかなく、重さにすると約0.6gで一円玉より軽くなっています。子供にとって注意しなければいけないのは 産み落とされたとき母親であるメスは子供たちをえさと認識してしまい、しばしば食べてしまうことがあるということです。出産を終え たメスは約20日が経過すると再び発情期に入り、次の出産に備えます。子供は9~10ヶ月で性的に成熟します。ジャクソンカメレオンは比較的長い寿命を 持ったカメレオンで、10年程度生きるものもいます。
 ジャクソン カメレオンの性格は結構好戦的であり、各々なわばりを持っているオス同士が出会うとしばしば決闘になってしまいます。戦いの方法は互いに相手の横に回り、 体を平らにさせた後に尻尾をカールさせます。更に空気を吸って体を膨らませたり、体の色を明るく変化させることによって威嚇を行います。このとき、 『シューッ』という音を出しながら口をあけて明るく変化した色を相手に見せつけます。このような威嚇行動の結果弱いオスは隠れようとするか、その場に凍り ついたり、逃げ出そうとしたりします。威嚇におびえたオスは体色がくすんだ色になるためすぐ見分けることが出来ます。更に威嚇だけで勝敗が付かない場合 は、 額に付いた三本の角を使って互いにつつき合い、相手を枝から落とそうとします。ときにはこの決闘で両方のオスが傷つくこともあります。

[アフリカ生 まれのハワイアン]
 ジャクソン カメレオンはもともとアフリカ大陸のケニアやタンザニアを原産としており、ケニア山やメル山の森の中に生息しています。生活はほとんど樹上に限られてお り、交尾や産卵以外で地上に降りてくることはまずありません。
 アメリカや日本等で、ペットとして人気のあるジャクソンカメレオンですが、原産地はアフリカであるにもかかわらず、実 際にはハワイ・オアフ島で帰化したものの子孫が飼育されている個体のほとんどを占めています。 これは1972年にあるペットショップのオーナーがケニアから多くの個体をハワイに持ち帰ったことが事の発端になっています。 彼によってペットとして販売する目的で36匹のジャクソンカメレオンが憧れのハワイ航路を越えて(古っ!!)はるばるアフリカからオアフ島に運ばれまし た。 この36匹はそのオーナーの持つハワイの裏庭に離され、現在ではそれを元とするかなりの数の個体群が(近親ではあるが)確認されています。そして、ここで 増えたカメレオンがアメリカ本土や日本に向かってペットとして輸出されていました。しかしながら現在ではハワイ州政府はジャクソンカメレオンの持ち出しを 禁止しています。
 ジャクソンカメレオンはワシントン条約によって絶滅危惧種に指定されています。 彼らの減少は主に生息域の開発とペット目的の乱獲によります。また、ジャクソンカメレオンの飼育は難しい点が多く、輸出中の長旅に耐えられずに死んでしま う個体が多く生存確率は十匹に一匹の割合だといわれています。また、仮に無事に届いたとしてもかなり弱っており、そこでも飼育の難しさから適切な対処が施 されることがしばしばあります。 実際ジャクソンカメレオンの飼育が成功しているのはサンディエゴ動物園と世界中の私的なブリーダーの一部だけであるといわれています。
 

[画像提供] 株式会社ナレッジリンク様  


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