アオリイカ Bigfin Reef Squid
[ひらひらイカ]
海釣りの人気者アオリイカ君は刺身にするとたまらない美味し
さで、春から夏になると日本全
国の沿岸にやって来ます。分布域はかなり広くインド洋から太平洋の熱帯および温帯の海に生息しています。特徴はなんと言ってもその大きなヒレ!胴体と同じぐらいの長さがあるコレをひらひ
らとはためかせて泳ぐ姿は大変優雅です。
大きさは大きくなると45cm程度に達し、半透明で肉厚な体を持っています。体中に茶色や白の斑点を持っており、子供の頃は体全体が虹色をしていて大変
鮮やかです。15cmぐらいになるとオスは体の横に紫色の筋が現れるのに対し、メスには斑点状の模様が現れ、アオリイカの雄雌はこの模様を見ることによっ
て容易に見分けることが可能です。
イカはタコと違い胴体の内部
に『軟甲』と呼ばれる薄っぺらい軟骨上の組織を
持っています。アオリイカと良く似たものにコウイカと呼ばれるイカがいますが、こちらは甲と呼ばれる石灰質の大きな船
形の硬い部分を持っており、種類的にはかなり違う生き物です。
釣りで馴染み深いアオリイカにはいろんな方言があり、モイカ、ミズイカ、バショウイカなど様々
な名前で親しまれています。『アオリイカ』という名前の由来には諸説があります。一説には『大きなヒレをあおって泳ぐから』というもので、その他にも昔馬の胴体に
泥除け用につけた馬具の一種である『あおり(障泥)』にヒレの形が似ているからという意見もあります。やっ
ぱり、最大の特徴であるヒレがポイントみたいですね。英語名の『Bigfin』も
大きなヒレという意味ですし。
[煮てよし、焼いてよし、干してよし]
アオリイカは春から夏にかけて浅い海のそこにある海草
やサンゴ(ミドリイシなど)の枝に、袋状の『卵嚢』と呼ばれ
る膜に入った卵を250〜数千個産みつけます。ふ化した時の胴長は5mmぐらいですが、一月に4〜5cmの非常に速いスピードで成長を続け
ます。一年後春を迎えると再び産卵期を向かえ、卵を産んだ後一生を閉じます。ちなみにあちこちの地域で産卵場となる木の枝を海に沈めておくこと
により、アオリイカの産卵を手助けしています。
普通イカは外洋性の生き物であり、あまり我々の近くに現れることはないのですが、アオリイカは主に夜、餌を求めて海岸近く
に現れることで知られています。従ってあまり沖にまで出なくても手軽に釣りを楽しむことが出来、『餌木(エギ)』と呼ばれるエビの形をした疑似餌を使って釣られ、釣
り上げたアオリイカは墨を吐いて対抗しようとします。釣った後は刺身や塩焼き、煮付け、日干し
などいろんな料理法で美味しくいただくことが出来ます。(私はやっぱり刺身が最高です。)漁獲高は多く年間100トンぐらいが水揚げされており、
産卵期に近い春先や夏にかけては大物が取れます。ちなみにその美味しさからか値段は少々お高いです…。