マンドリルはアフリカ大陸の西
側、赤道ギニアやカメルーン、ガボン等の国々の熱帯雨林に生息するオナガザ科の
大型の霊長類です。マンドリル
の特徴は、なんと言っても
その
顔に描かれた色鮮やかな模様で鼻と眼の周りは赤く、鼻の両側
はヒダがあり明るい青色で、更に黄色いあごひげを持っています。正に天然のお化粧ですねぇ。
マンドリルの毛は茶色がかったオリーブ色で体の下側の方が色が薄くなっています。尻尾は短くまっすぐ上に伸びているのが特徴です。
マンドリルの指は我々の
手と同じように、親指が他の四本の指に対して向かい合う形でついており、物を握るのに適した形をしています。マンドリルはこの発達した指を
使って、自由に
木を登ることができます。
このおサルさんの大きさは、
オ
スで大体体長が80cm、体重が11〜25kgぐらいになります。マンドリルはメ
スのほうが小型であり、大人になっても
オスの大きさの半分ぐらいしかありません。特徴的な顔の模様はメスよりもオスのほうが色鮮やかで際立っています。マンドリルのお尻には毛が生えておらず、
オ
スの場合は鮮やかな青色をしています。
彼らは基本的に昼間活動し、夜は木に登って休みます。
マンドリルの食事は植物が中心で、果実や
植物の種、キノコ、根、草などを良く食べます。しかし、
時に
は動物も食べることが知られており、昆虫を中心とした無脊椎動物や小型のヘビやトカゲ、カエルなどの脊椎動物をも獲物にしてしまいます。マ
ンド
リルの顎は大きく、臼歯が発達しており、種や草などの硬い物を食べるのに適しています。また発達した手を使って、植物の根を器用に掘ることも知られていま
す。マンドリルは普通、昼間には地面に降りていることが多いのですが、体の小さいメスや子供は食事のときなどは木の上に上ります。
マンドリルはたまに森から出てきて、
近くの農園にある油やしや他の作物を荒ら
すため農民には嫌われています。また好奇心も旺盛で、昔、動物園などでは眼鏡
やパイプなどを奪い取っていく事件が多発していたらしいです。なんか
日本のサルもアフリカのサルもやるこ
とはあまり変わりませんねぇ…。
マンドリルは
大きな頬袋を持っ
ており、なんと胃の中に入るのと同程度の食べ物を口の中に貯
蔵しておくことが出来ます。これによって彼らは食べ物を口に溜め
込んだまま、手足を自由にして木に上ったり、あちこちを動き回ることが出来ます。マンドリルは歩くとき四本の指の背中を地面につけて、四足歩行をします。
マンドリルは集団で行動することが知られており、
群れのサイズは大体数匹から20匹ぐらいで
すが、
多いときには50匹に
達することがあるといわれていま
す。また
乾季になると群れ同士
が集まり200匹以上もの大群になります。
マ
ンドリルの群れは一匹のボスであるオスと多くのメスや子供か
らなる、『ハーレム
型』と呼ばれる構造をとることが知られています。人間に対する警戒心は強く、こちらの姿を見るとすぐに姿を消してしまいま
す。
主に群れの防衛は体の大きなオスが行います。彼が群れから離れているときでも、群れの仲間は危険が差し迫ると音を立ててボスを呼び、それを聞くとボスはす
ぐに駆けつけてきます。一説にはマンドリルのオスの持つ色鮮やかな模様は、木の生い茂った森の中でも仲間のサルが自分を見つけやすいようにするためである
とも言われています。実際ボスであるオスザルは群れから離れて姿が見えなくなっても、常に鳴き声をあげて自分の位置を知らせており、群れの仲間もそれを元
にしてボスから離れないようについていくことが知られています。またマンドリルは怒ると乱暴に地面をたたき、敵が来たときには手を広げ、大きく口を開け
て、頭を低くすることで威します。
彼らは表情が
豊かで、それを元にお互いにコミュニケーションをとることが知られています。しかしながらその表情は我々の眼から見ると非常に変わってお
り、
例えば挨拶をするときなどは唇の真ん中を閉じたまま両側を開いてとがった犬歯をむき出しにします。またその他にもオスのマンドリルは仲間に毛づくろいを
して欲しいときには、頭や肩を激しく揺り動かすことが知られているのですが、森の中でいきなり彼らのこんなコミュニケーションを目にしたら、はっきり言っ
て怖いと思います。実
際
現地の人々は彼らのことを悪
魔じみた動きをするサルとして見ており、『森の悪魔』という
別名まで付けられています。しかしながら彼らにとってみれば、こ
れらの行動は友好の証みたいなものなので、決して意地が悪いサルというわけではありません。
マンドリルは7月から10月の間に交尾を行い、約半年後の雨季である12月から4月にかけて子供を出産します。繁殖のサイク
ルは大体二年おきぐらいだとさ
れていますが、食料の多さなどに左右されます。メスは
一回の出産で一匹だけ子供を産み、群れの中で育てます。生まれたばか
りの子供の毛は黒色でピンク色の
肌を持っています。
メスの子供は成長した後もその群れに留まりますが、オスの子供は青年期を迎えると群れから離れて生活を送るようになります。ハーレムを作れない、大人のは
ぐれオスは一匹で生活することもありますが、オス同士で群れを作るところが確認されており、時には百匹を超える大群になることもあります。
今の日本人男性
以上にマンドリルのオスの結婚問題は深刻のようです…。
現在、
彼らの住む地域の多くで
森の開発が進んでおり、マンドリルの数は劇的に減少していま
す。特にマンドリルの生息地には石油を初めとする鉱物資源が数多
く存在しており、そのような地域では急激な木の伐採が行われています。そんな中マンドリルは絶滅危惧種に指定されていますが、彼らに差し迫った危険は棲む
ところの減少だけではありません。
マンドリルの居る国々のいくつかの地域の人々の間には
マンドリルを食べる習慣があ
り、旅行者などに対しても名物として出されます。特に最近ではマンドリル
の居る森の近くまで道路が延び、捕獲して近隣の都市へと運びやすくなっているため、
商業目的の狩猟も大規模化してきています。
マンドリルの生態については謎が多く残されており、このまま彼らが減少してしまうと自然界における彼らの研究は不可能になってしまいます。このため世界中
で彼らに対する保護対策がなされており、各地の動物園などでも様々なプロジェクトが行われています。ちょっと怖い面もありますが、社会的で高い知性を持つ
彼らは我々にきっと多くのことを教えてくれるに違いありません。
マン
ドリル関連のトピックス
北海道釧路
市動物園で飼育されていたオスのマンドリルの「ターボウ」が死亡しました。享
年16歳で、死因は腎不全とみ
られるそうです。ターボウは豊橋総合動植物園生まれで、上野動物園に移った後、2003年から釧路市動物園に来園し、一緒に来たメスの「クミ」との間には1匹の子供が生まれています。
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(最新改訂2007年12月14日)
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