北アフリカの山岳地帯に棲む
バーバリーシープは、大きくて
立派な角が特徴的なヒツジの仲間で
す。
彼らはヒツジの中では大型の部類に入り、
オスのバーバリーシープは最大で体重145kgに達します。それに対して
メスはやや小柄で、大きくても65kgぐ
らいまでにしかなりません。彼らの全身はバーバリーシープ特有の
茶色い毛皮で覆われており、体
の下側ではこの毛の色がやや白くなっています。
彼らの一番の特徴である
2本の角は
オスとメス両方に生えており、頭のてっぺんから一旦外側に向かった後、内側へとカーブする形をしています。この角はメスよ
りもオスの方がずっと大きく、
最大
84cmにもなり、その断面は三角形をしています。また彼らはあごの下から胸にかけて長い毛を生やしており、まるで長い顎ヒ
ゲを持っているように見えま
す。このヒゲによりバーバリーシープ達はまるで長い年月を生きてきた古老のような威厳があり、さらに太い角も相まってとても威風堂々とした顔つきをしてい
ます。彼らを一目見た瞬間、只者ではない雰囲気を感じたのは私だけでしょうか?
彼らは一見おとなしそうな姿をしているにもかかわらず、運動神経はかなり高いようで、立ったままの状態から助走なしに
2mも飛び跳ねることもできま
す。
バーバリーシープは草食動物で、主に草やアカシアなどの木の葉っぱを食べて暮らしたいます。一年の中のそれぞれの時期において彼らの主食となる食べ物は変
化し、冬は主に草を食べるのに対
し、他の時期には低木の葉が多く食べられますまた。乾燥した地域に棲む彼らはほとんど水を飲むことはなく、食べ物から水分を得ていますが、まれに水たまり
など
を見つけるとそこの水を飲んだり、水浴びをすることが知られています。
彼らが一日の中でもっとも活動的になるのは明け方と夕方で、主にこの時間に食事を行います。そして気温が上がる日中は木陰などで休んでいることが多いよう
です。
メスのバーバリーシープは主に
3〜10
頭からなる群れで行動し、その群れの中には子供のバーバリーシープが含まれ、群れはリーダーであるメスによって率い
られます。
オス同士はこの群れ
のメスと交尾をする権利をかけて戦い、それに勝ったオスが繁殖を行うことができるようになります。オス同士の戦いは互いに相
手に向かって角を向けたり、角を突き合わせることによって行われます。彼らの戦いが激しく相手を傷つけるようなものになることはほとんどなく、他のヒツジ
やヤギの仲間のように蹴りを繰り出したりすることもありません。
バーバリー
シープの繁殖期は9〜11月頃で、この頃に入
るとメスは発情期に入り、お気に入りのオスの体を舐めたり、鼻先をあわせたりして求愛行動を行いま
す
。バーバリーシープの妊娠期
間はおよそ160日で、3〜5月頃に出産が行
われます。ほとんどの場合、一回の出産で生まれる子供の数は
一頭だけですが、た
まに双子が生まれることもあります。
産まれたばかりの子供の
体重はおお
よそ4.5kgぐらいで、生後4か月ぐらいになると乳離れの時期を迎えます。完全に大人になって繁殖を行うようになる年齢はオスの場
合個体によって変化しますが、
メ
スのバーバリーシープでは生後一年半ぐらいで子供を産むよう
になります。
バーバリー
シープの天敵となる主な動物にはヒョウやカラカルなどのネコ科の肉食動物が知られています。
彼らの茶色い毛皮は周りの岩に溶け込ん
で、これらの
動物から見つかりにくくなる効果があり、敵と出会った彼らはじっと動かずに岩になりきって敵をやり過ごそうとします。
バーバリーシープは住む地域によって微妙に違いがあり、これまで
7種類の亜種(一つの生き物の
種をさらに細かく分けたもの)が知られています。その中で
エ
ジプトバーバリーシープは絶滅したものと考えられていましたが、
近年まだ彼らが生存しているという証拠が見つかり、ごく少数がまだどこかに生き残っている
といわれています。
その立派な角を持っていることから、バーバリーシープは狩りの獲物として人気があり、
ゲームハンティングのためにア
フリカ以外の世界の地域にも数多く持ち込まれました。最初にバーバリーシープが運び込まれたのは
ドイツやイタリアなどのヨーロッパの国々で、
20世紀に入ると
アメリカの
動物園などでも展示されるようにな
りました。さらにアメリカに渡った個体の中には野生に放たれ、そこでそのまま
野生化したものもいます。
ニューメキシコ州では1950年、テキサス州では
1957年にバーバリーシープが放たれた記録が残されています。これらのバーバリーシープは現在で
は原産地である北アフリカのものよりも繁
殖しており、ア
メリカ以外でも1970年には
スペ
イン南東部に持ち込まれ、そこで野生化したものが多く確認されています。
また大西洋に浮かぶカナリア諸島のラ・パルマ島という島にも彼らが持ち込まれたのですが、
数が増えすぎてしまい島本来の生態系を脅
かす状態になってお
り、現在問題となっています。このラ・パルマ島の場合狭い島の中での出来事のため、短期間の間に周辺の環境に対して彼らの影響が現れること
となってしまったのですが、
他
のバーバ
リーシープが持ち込まれた地域についても、彼らがもともと住んでいた草食動物の食べ物となる植物を食べてしまうのではないかと心配されています。
また一部
の地域では彼らによって農作物が荒らされたという被害も報告されており、それらに対する対策も必要となっています。
バーバリーシープは北アフリカのサハラ地域に棲む遊牧民の人々にとっては、非常に重要な動物の一つで、
肉や毛皮、角など様々な部位が生活の場に
役立てられています。し
かし近年
その毛皮などに対する
需要が世界的に増えてくると、各地で乱獲が行われるようになり、本来の原産地である北アフリカでは現在大幅に生息数を減らしてし
まっています。
執筆:2008年4月19日
[画像撮影場所] 天王寺動物園
|