アジアゾウ Asian Elephant

大きいお友達
アジアゾウ画像
動物園の人気者と言えばやはりゾウさんですが、その中でも有名なのがやはりアフリカに すむアフリカゾウとアジ アに住むこのアジアゾウの 2種類です。

アジアゾウは主にインドの一部から東南アジアに分布していて、スマトラやボルネオのような島 々にもみられます。野生で見るアフリカゾウが人間とほとんどかかわらないのに比べて、アジアゾウはそれぞれの地域で人間の生活 にとけこんでいます。人間と 暮らしているアジアゾウは重い物の輸送やサーカスなどで芸を行うなどのお仕事をすることが出来るほか、観光客を乗せて楽しませたりすることもあり、比較的 私たちになじみ深いゾウさんです。アジアゾウは主に 低い木のある茂みの中の、草原に近い比較的開けたところに住んでいます。その他にはかなり木が密生したジャングルの中にも見られることがあります。

アジアゾウの体長は5.5〜6. 4mぐらいで、肩の高さは2.5〜3mにもなり、陸にすむ動物の中では、アフリカゾウに次 いで世界2位の大きさを誇ってい ます
。皮膚は灰色帯びた茶色をしており、個体によっては非常に濃い黒に近い色になることも あります。アフリカゾウに比べて耳が小さく、また背中が丸まっているのが特徴で、ごつごつしたアフリカゾウの背中とは対照的です。さらに しっぽの長さも1〜1.5mぐらいあり、これも規格外の大きさです。

そして彼らもその大きな体重を支えるために太い脚をもっていますが、アジアゾウの体重はオスで4〜5トン、比較的小型なメスでも2〜3トンにもなり ます。前足のツメの数5つでは後ろ足には 4つあり、それぞれアフリカゾウのものよりもひとつずつ多くなっています。またゾウはホ乳類なのに体毛が少なく見えますが、アジアゾウの頭の上には産毛の よ うな毛が生えており、手触りはゴワゴワしているそうです。またのっべりとしたアフリカゾウと額とは異なり、アジアゾウの額は真ん中がくぼんでおり、両側に はコブが形作られていることで区別されます。

ゾウと言えばやはりその長い鼻が 特徴的なのですが、これは実は本 来の鼻と上唇がくっついて長く伸びたもので、アジアゾウの鼻の先には上側に小さな突起が一つ付 いています。実はゾ ウはこの突起を使って小枝などの小さなものをつかむことができ、餌を食べたりする上で非常に重要な役割を果たしています。(ちなみにアフリ カゾウは上下一対、計2つの突起をもっています)

またオスのア ジアゾウは門歯とよばれる前の方の歯が発達して口の外に飛び出した牙をもっています。これに対してメスの アジアゾウにはこの牙はついていないか、もしくは持っていてもすごく小さなものしかありません。アジアゾウは鼻と同じようにこの牙も器用に使うことが出来 て、 水を得るために土を掘る他に、木の皮をはいだりするのにも用いられ、また木に傷をつけて印をつけたり、意外なところで は鼻を牙の上に置いて休めること もあります。ちなみに人間には右利きと左利きがありますが、ゾウの牙にもこれと同じようなものがあっ て、それぞれのゾウは右と左どちらかの牙をよりうまく 使うことができるそうです。

アジアゾウの知能は高いことでも有名で、人間やイルカに似たよく発達した大脳の構 造を持っていて、サーカスではその知能を活かして複雑な曲芸などを行っ ていることはご存じの通りだと思います。

社会的なゾウの世界
ゾウはみなさんよくご存じの通り、草食動物で主に地面に生えている草を食べます。 草を食べる時にはその長い鼻を使い、草の束を巻き取って直接口の中に運び 込みます。また木の皮や根っこを食べることもありますが、その時にオスのゾウは長い牙を使って木の皮を剥ぐこともありま す。ちなみに木の皮を食べる時には このほかにも鼻を使って枝を持 ち、それを回転させながら歯で削り取るといった、ちょうど私たちがト ウモロコシの実を軸からこそぎ落として食べるときの様な 方法を使うことがあるそうです。こういったところはなんかとても人間くさくて面白いです ね。

そのほかにも根っこや木の茎などを食べることがありますが、その巨体を維持するのには非常にたくさんの食べ物が必要で、一日になんと150kgの食べ物を 食べるということです。このため、彼らは一日のほとんどの時間を食べ物を探すのに費やしており、主に朝と夕方、夜に食事をします。これ以外の暑い日中は日 陰で休んでいることが多いということです。更に食べる量とともに食べ物を探す範囲も広大で、オスの場合は15km四方、メスの場合には30km四方の地域 を餌を探して徘徊し、餌の少ない乾季にはさらに大きな範囲を移動することが知られています。さらに食べ物と同時に生きていくためには水が必 要で一日におよ そ 140リットルの水が必要であるといわれています。このためアジアゾウは水辺からはあまり遠くに離れ ることはないそうです。また彼らは基本的に夜中は眠り について体を休めます。

アジアゾウの耳はアフリカゾウと比べると小さいものになっていますが、彼らはこれを使って体の熱を放出させて体 を醒ましたり、また外敵や他のゾウとの争い のときに威嚇の道具として使うといわれています。

アジアゾウは群れを作ることが知られていますが群れを成すのは10〜20頭ぐらいのメスと子供のみで、オスのアジアゾウは6〜7歳になって成熟 すると群 れを離れて一人で過ごすようになります。それぞれ特定のなわばりを持つことはありません。またメスの群れは“女家長”と呼ばれる最年長のメスによって率い られます。そして発情期にはオスはメスの居る群れに接触を持つのですが、この時にメスをめぐってオス同士の争いが行われることがしばしばあ ります。メスは およそ22日周期で発情期に入るといわれており、交尾を行うのは発情期に入った最初の一日目だけです。

その後メスは18〜22か月という非常に長い妊娠期間を経て一匹だけの子供を出産し、
一頭の 母ゾウは食べ物が十分にある理想的な地域では3〜4年に一度ぐらいの割合で子供を産むそうです。さすが アジアゾウということで、子供ながらもその大きさは産まれた時にすでに体重100kgに達しますアジアゾウの子供は産まれてからすぐに立 ち上がり、数日 後には母親の後をついて歩きまわるようになります。最初のころは主に母親かもしくは同じ群れの中の他の授乳期にあるメスの母乳で育てられま すが、数ヶ月経 つと草を食べ始めます。授乳期間はおよそ18か月ぐらいですが、その後も数年間は子ゾウは群れの中で育てられます。

群れの中にいる子供のゾウは母親や他の大人のメスの尻尾に鼻を巻きつけてつかまり後ろからついて行くこともあります。また幼いころのゾウは母親の糞を食べ ることがありますが、アジアゾウは食べた物の44%ぐらいしか消化できないため、残ったの栄養を食べた糞から得るととも に、まだ自分が持っていない消化に 必要な腸内バクテリアを取り込む目的があります

アジアゾウの 寿命は70年ほどであるといわれています。ゾ ウの口の中には非常に大きな歯が 備わっていますが、歳とともに それぞれが少しずつ前に出てきて、長年草 をかむのに使われてすり減った前歯は時期がくると後ろのものと入れ替わります。そして最後の歯がすりへってものが食べられなく なると、アジアゾウは悲しい ことに飢え死にしてしまうそうで、これが自然界におけるゾウの寿命を制限していま す

色々な用途に使われるゾウの鼻ですが、体に砂をかけるのにも用い られます。これは体についた寄 生虫を駆除するためであると考えられており、この他に水浴び をするときにも鼻を使います。また鼻を使って大きな声を上げコミュニケーションを行いますが、危険を感じた時にはしっぽを持ち上げて走り、仲間にそのこと を伝えるといわれています。ゾウは嗅覚はもちろん聴覚も発達していますが、視覚はそれほどでもないようです。

ところで普段はおとなしいイメージがあるゾウですが、野生のものは結構凶暴な一面もあり、あの巨体でも走ると時速48km以上のスピードが出るそうです。

ゾウとヒトの未来
その体の大きさと力の強さでゾウがほかの動物に襲われることはほとんどありませんが、記録としてはトラインドライオンに捕食された事実が報告されていま す。唯一危険なのが子供のころな のですが、この時にトラなどが子ゾウ襲おうとしても、群れにいる他の大人たちが円陣を組んで子 供を真ん中に配置して守るた め狩りを成功させるのは簡単なことではありません

ですが今、アジアゾウの数は減少しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッド データブックでも絶滅危惧種に指定されています。 ゾウは昔には食用として 人間に狩られてきた歴史がありますが、近年は家畜として飼われることも多くなってきました。しかし彼らの持つ象牙が装飾用として非常に価値があることがわ かると、大規模な狩りが行われるようになり、現在も象牙をめぐる密猟は後を絶たない状況です。

そして何よりも問題となっているのが生息地における森林伐採農地の拡大などによる森林の減少で、野生のアジアゾウは現在28,000〜42,000頭にまで 減ってしまっているといわれています。これによって数世紀前にはアジアゾウの仲間は南西アジ アと中国の大部分から姿を消してしまうという悲しい結果になっ てしまいました。また人間の活動域が広がることでゾウの住む森が分断され、かつては季節ごとに見られたアジアゾウの大移動が出来なくなった り、逆にゾウの 住み家の近くの農家で作られる農作物(バナナやサトウキビを)をゾウが食べる被害が出ているという事実もあります。

現在各地でアジアゾウのための保護区が作られつつありますが、面積が小さくて逆に人間とゾウの対立を生むこともあるそうです。しかしながら上で述べたとお り、アジアゾウは現地では家畜化に成功しており、人々の生活に役立っていてなくてはならない動物の一つです。また歴史的にもインドのヒンドゥー教などでは ゾウは神的な存在として信仰を集めており(ガネーシャやアイラーヴァタ、ギリメカラといった名前で知られる)、文化的にも人間と深いつながりを持っていま す。難しいものの動 物園などではアジアゾウの繁殖の成功もしており(日本国内では2004年に 兵庫県の王子動物園で、2007年に千葉県の市原ぞうの国2件の成功例が あります)、これから先はアジアゾウと人間は二人三脚で助け合いな がら歩んでいくことでお互いの未来が切り開くことが出来ると思います。

   アジ アゾウ関連のトピックス
兵庫県神戸市立王子動物園で飼育されていた国内最高齢のメスのアジアゾウ「諏訪子」が4月10日死亡しました。諏訪子の年齢は65歳で、人間でいえば100歳を超える大往生だったいうことです。阪 神大震災も乗り越え、長年神戸の街を見守り続けた諏訪子のもとには、多くの市民から彼女との思い出を伝える声とともに追悼の言葉が届けられており、19日 には同園で最後のお別れ会が開かれる予定となっているそうで す。
2008年4月11日  毎日新聞

先日沖縄市の沖 縄こどもの国にやってきた二頭のオスとメスのアジアゾ ウ、ラフルデビ一般公開が2月2日に行われました。ゾウを初めめて見た 子供たちも多く、ゾウが姿を現すと招待された保育園児などから多くの歓声が上がったそうです。同園ではこのアジアゾウの愛称を一般から募集するそうです。
2008年2月2日 琉球新報

沖縄市にある沖 縄こどもの国新しく二頭のオスとメスのアジアゾウがインドからやってきました。 沖縄は2001年に、同じこどもの国にいたマルミミゾウが死亡してから、ゾウは一頭もいなくなっており、今回6年ぶりの復活となるそうです。オスの「ラフル」は今年で5歳、一方メスの「デビ」は7歳で来年2月初旬ごろから一般公開予定です。
2007年12月28 日 沖縄タイムス

神戸市立王子動物園で10月に産まれたオスのアジアゾウの赤ちゃんの名前が「オウジ」に決定しました。今回名前を募集したところ3210件の応募があり、「オウジ」が最多の115件を集めたため、これに決定したそうです。 12月15日には初の一般公開が行われ、最初は部屋の中に閉じこもっていたものの、その後はお客さんに興味を持って近づく姿も見られたそうです。これからの成 長が大変楽しみです。
2007年12月16 日 読売新聞

神戸市立王 子動物園で10月22日に産まれたメスのアジアゾ ウ「ズゼ」の子供のゾウ(オス)ですが、その後も無事に 成長し、このたび新たに名前を募集することになったそうです。一か月を経て17kgも体重が増えて、飼育係さんの姿を見ると近寄ってくるほど人 懐っこいそうです。一般公開は12月半ばを予定しているそうです。
2007年11月20 日 毎日新聞

神戸市立王子動物園のメスのアジアゾウ、「ズゼ」154kgオスの赤ちゃんを出産。国内でアジアゾウの出産はこれで4例目オスの赤ちゃんが産まれたのは初めてだそうです。お父さんは同園の「マック」で、生ま れてきた子ゾウは2か月後をめどに公開予定だそうです。
2007年10月23 日 毎日新聞

上の写真に写っている小田原城址公園で人気のアジアゾウ、「ウ メ子」が今月60歳になり、めでたく還暦を迎 えたそうです。ウメ子はなんと国内3番目の長寿のアジアゾウで 小田原城址公園ではお祝いイベントも行われ、バースディケー キも送られる予定だということです。
2007年10月17 日 毎日新聞

仙台市八木山動物公園の アジアゾウ「トシコ」を題材にした紙芝居が製作されることになったそうです。トシコは八木山動物公園 開園以来からいる唯一の動物で、今年なんと53歳になるそう です。もともとは大阪の水族館で飼われていたのですが、事情があって仙台に移ってきたらしく、その波乱万丈な半生が描かれる予定であるそうです。
2007年10月10 日 河北新聞

執筆:2007年7月30日(最新改訂2007年12月17日)

[画像撮影場所] 小田原城址公園

小田原市(観光)サイトバナー

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