オオワシ Steller’s Sea Eagle

[色鮮やかな、世界最大 級のワシ]

オオワシ は羽を広げた長さが2.4mにもなる、日本で見られる野鳥では最大級のものの一つです。体は濃い茶色もしくは黒い羽毛で覆われ、尾や肩、腿、額などに白い毛を持ってお り、黒い羽の下は白い羽毛に覆われています。尾羽の先はV字型をしており、また非常に鮮やかな黄色の大きく湾曲したクチバシを持っており、同様に目や蝋膜 (クチバシの付け根の部分)も黄色くなっています。オスもメスも外見は似ていますが、メスの方が大きめで、メスの羽の長さは68cmの達するのに対し、オ スは59cm程度です。また重さはそれぞれ9kg、6kg程度です。この種は一般的には亜種は無いとされていますが、研究者の中には一般に分布しているも のに加え、韓国に白い部分の無いものが住んでいるという意見もあります。実際これまで18件の黒 色の個体が捕まっており、そのうち17件が韓国でのものですが、実際にはこのグ ループについては、事例の少なさから良く分かっておらず通常のオオワシの単なる色違いだと考えられているそうです。

生まれたばかりの雛の羽毛は絹に似た白色であり、その後茶灰色へと変化します。若 いオオワシの風きり羽や尾羽は成鳥のもの尾よりも長くなっており、幼羽は灰茶色であり付け根が白く、明るい色の斑点が尾羽に見られます。若い固体の羽毛は 繁殖地が重なっているオジロワシのものと非常に似通っています。その後羽が生え変わっていくとこの斑点は失われます。飼育下では約5年で最終的に完成した 羽が生え揃うといわれています。


[流氷と共に北海道へ渡 る]

オオワシは主にロシア極東のオホーツク海沿岸やカムチャッカ半島、千島列島、日本 の北海道や北本州などに分布しています。最大の繁殖地はロシアのコーリャク高原からアムール川周辺であり、その他カムチャッカ半島やハバロフスクなど各地 で繁殖しているのが確認されています。大部分のワシはそのまま繁殖地で越冬しますが、秋から冬にかけて、上記のような繁殖地から越冬のため南へとわたるこ とが知られており、日本でも北海道などに流氷と共に一月ごろにやってきます。根室海峡では毎年二月頃にワシの数はピークに達し、毎年オホーツク海の流氷によって運ばれるワシの数は何千にも及ぶといわれています。その他の地域でもまれに目撃されることがあり、日本の琉球列島の南やミッドウェー島、北京の南西などに現れた記録があります。北海道ではオ ジロワシなどと共に海に近い湖畔や、海岸などに集まります。その後三、四月頃になると再び繁殖地へ向けて旅立ちます。この時の移動は海岸線に沿った形で行 われ、単独で飛行するケースもたびたび確認されていますが、グループで飛ぶときは100〜200m間隔で飛んで行きます。

繁殖期間は地域ごとに異なり、カムチャッカでは二月の終わりごろから産卵地へと移 動します。巣は二月の終わりから三月の初めごろにかけて作られ始め、巣の中で交尾を行った後四月の中旬ごろにかけて産卵が行われます。産み落とされる卵の 数は一つの巣あたり1〜3個であり、大抵は2個です。卵は5月の終わりごろまで巣の中にありますが、抱卵期間は良く分かっていず、少なくとも34日以上親 鳥は卵を抱くといわれています。巣は主に山の近くの川や強国、海岸や湖に見られ、枯れた立ち木の上や海岸近くの岩場が好まれます。地域によって巣の分布に は差があり、東の方の海岸ではほとんどの巣が海から30kmの地域に作られるのに対し、西の方では50〜80kmの範囲に多くの巣が作られます。ちなみに 内地の方では川から100km以内のところに多くの巣が作られます。アムール川下流やオホーツク海沿岸のオオワシは巣作りにカラマツの木を良く用います が、カムチャッカではポプラやカンバの木の上によく巣が見られます。オオワシの巣は非常に巨大で 直径が2mに達することもあります。同じ巣を数年続けて使用することが知られており、その後巣を作り変えるときは新しい巣は多くの場合古い ものの900m以内に作られます。産卵の成功率はそれほど高くなく、記録によると半分以上の卵はかえらず、かえっても三割程度の雛は死んでしまっていま す。特にクロテンやオコジョにより捕食が頻繁に行われており、また作った巣がそれほど丈夫でなく 壊れてしまって卵が落ちてしまうケースも多く見られています。これまで一つの巣に3羽以上の雛が居たケースは一つも報告されていません。

 

[好物はサケ!!]

オオワシはサケを主な獲物としており、生きたサケを捕まえることもあれば、死んだ サケの死体をあさることも知られています。サケが豊富な夏の終わりから冬の初めにかけてはサケ ばっかり食べており、かなりのサケ好きっぷりを発揮しています。特に産卵を終えて力尽き死んでしまったサケはワシたちにとっては格好の食料 源であり、越冬のためには重要になります。サケの多い川や海岸には多くのオオワシが集まってくることが知られており、カムチャッカでは700羽もの集団が確認されたことがあります。

オオワシの狩の仕方にはいくつかのパターンが知られており、最も一般的なのは水面 から5〜30m上空にある止まり木や岩場から水面にダイブし、獲物をとる方法です。このほかに水上6〜7mを旋回しながら飛び同様に水中にダイブして獲物 をとる方法や、浅瀬や砂州、氷の上に立って足元を通り過ぎる魚を捕る方法も確認されています。集団で餌場に居るオオワシ同士の間では頻繁に取ったえさの横 取りが行われており、特に強い成鳥のオオワシが最もよく横取りをしていることが知られています。

オオワシの食性の内訳を見てみると、アムール川下流では夏の食料の80%は魚であ り、10%程度が鳥、残りの5%が哺乳類となっています。海岸沿いでは打ち上げられたカニやムラサキウニイカなども食べられ、その他アザラシやアシカなど の死体も食べられています。特に若い個体に対してはこれらの食料は重要であると考えられています。その他カムチャッカでは雛に対しては主にダチョウやカモ メ肉が与えられており、ハンターが罠で捕まえた野ウサギやオコジョ、クロテン、キツネを食べることもあります。

 

[北海道のオオワシとタ ラとシカの関係]

北海道の羅臼などで、沿岸のワシたちは大量に水揚げされるタラを求めてやってきま す。かつて2月頃の最も漁獲量が多いときでは1250トンものタラがこの値で水揚げされており、水 揚げ時に0.5%程度が網などからもれ落ちたとしても、実際に北海道に渡って来るワシの何倍にも当たる数千羽分の個体を養うのに十分な食料を確保すること が出来ました。しかしながら近年タラの漁獲量が減っており、オオワシたちがこれを利用することが難しくなってきました。それと時期を同じく して、このところ北海道の山間部でスポーツや頭数制限のためハンターによって殺されるシカの数が急増しており、1990年には15000頭程度だったもの が、1996年以上には45000頭以上のシカが仕留められています。これらのシカのうち捨てられた死体を求めてオオワシは山間部へと移動する傾向があ り、近年では北海道に来るワシの三分の一以上が山で冬を過ごすといわれています。しかし、シカの 死体を食べるワシ達は同時にシカを撃つときにハンターが使った鉛製の弾丸を飲み込んでしまい、これによるオオワシの鉛中毒が問題となっており、それによる 死亡率の増加が起こっています。現在では北海道におけるシカ猟での鉛玉の使用が禁止されていますが、強制力に弱くワシたちを鉛中毒の被害か ら守るためのより一層の努力が必要となっています。

 

[衛星でオオワシを守 れ]

オオワシの個体数は全体でおおよそ5〜7千羽程度であると考えられています。この 内3500羽程度はカムチャッカで越冬し、2000羽が北海道に渡ってきます。オオワシに対する保護活動は各地で行われており、カムチャッカではほとんど の生息地が自然保護区や保護地域に指定されており、日本でも天然記念物に指定され厳重に保護され ています。またIUCN(国際自然保護連合)により“危急種”の認定もされています。オオワシの生育数は安定しているといわれていますが、 繁殖力の弱さから数を増やすには至っていません。特に生まれて一年目の若鳥の多くが最初の冬を越せずに死んでしまいます。そのほかに猟師の仕掛けた罠にか かっている獲物を横取りするため、昔からのわしたちに対する迫害が続いており、そのほか北海道などにおける魚などへの工業的な汚染も彼らへ影響を与えてい ます。

近年ではオオワシの研究に衛星を使った追跡法が利用さ れており、季節ごとの個体の分布の変化などを調べることにより生態の解明に役立てられています。特に前述の北海道における山間部への越冬地の移行もこの方法によって証明され、こ のことは鉛中毒を防ぐための法律の施行を早めるための証拠の一つとなりえます。


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