コウノトリはツルに似たフォル
ムの鳥で、真っ白で美しい羽毛を持ち、特別天然記念物に指定
されていることでも有名です。彼らは日本やロシア、中国、朝鮮半島などに分布する、アジアを代表する鳥の一種です。
日本の野鳥の中で彼らはかなり大型
の鳥で、全長は1.
2m、翼を広げた長
さは2.2mに達し、体
重も4kg以上あります。またオスのほうがメスよりもやや体が大きくなります。さらに大きな翼は後ろ半分が黒くなってお
り、それと同じように黒くて長い、先のとがったくちばしを持っているのが特徴です。そして目の周りだけ鮮やかな赤色をしているのがチャームポイント(?)
です。
彼らは季節によって渡りを行い、生息地を変える鳥で、夏は主にロシアと中国の国境付近にあるア
ムール川やウスリー川などの河川の近くで過ごし、冬になると
ずっと南に南下して、中国の長江流域などで越冬します。また一部は冬に朝鮮半島や台湾、日本に渡ってくることがあり、時にはインドやミャン
マー、バングラ
ディッシュといったはるか南の地域に姿を現したことが記録に残っているそうです。
非常に印象的な姿をしている彼らですが、日本でもコウノトリ保護増殖センターの
ある兵庫県などを中心に大変なじみ深い鳥で、兵庫県の県鳥にも指定されてお
り、また豊岡市
にはその名も「コウノトリ但馬(た
じま)空港」という名前の空港があります。
コウノトリは
主に川の近くや湿原などの水辺に暮らしており、主に魚やカエ
ルなどの両生類、その他の小動物を食べ物としています。
彼らは高い木の上や鉄塔の上など、非常に高い所に巣をつくり、そこで産卵を行います。毎年春先にあたる
3〜4月になるとメスは巣の中
に卵を産み、一回に産み落とされる
卵の数は2〜6個ぐらいです。そして卵はおよそ1か月ほどオスと
メスによって交互に抱かれて温められます。卵から産まれてくる子供は真っ白な羽毛に覆われていて、親とは異なるオレンジ色のくちばしを持っています。
同じような姿をした
タンチョウなどは非常に大きな声で鳴くことから、コウノトリも鳴くこと
が得意と思われるかもしれませんが、逆に
彼らは大人になると全く鳴かなくなります。
その代わりに
大きなくちばしを
打ち鳴らして音を出し、それによって繁殖期などに仲間とコミュニケーションをとることが出来ます。
ところでコウノトリといえば、仲睦まじい夫婦の所に子供を運ん
でくるというお話が有名ですが、これは実はコウノトリではなく、それに近縁のシュバシコウと
いう鳥のお話で、コウノトリが運んでくると語り継がれているのは日本だけだそうです。
ご存知の通り、近年
コウノトリ
は非常に生息数が減少しており、国際自然保護連合
(IUCN)のレッドリストに
も絶滅危惧種として名を連ねていま す。現
在
全世界でも1000〜2500羽しか生き残っていないと見積もられ
ており、さらに
今もなお急速に
減少していることが確認されています。彼らの生息
数が減少している原因としては、湿田や森林の減少や、農薬散布による生息地の環境の悪化、大規模な漁業による彼らの食べ物である魚の減少などが挙げられて
いま
す。しかし実際には色々分かっていない点も多く、これら複数の原因が複雑に絡まり合っており、
容易に解決することは大変難しくなっています。
その他にも法律の保護のもとにあるにもかかわらず、人間による密猟も行われており、アムール川のダムや中国の長江に建設予定の三峡ダムも彼らが棲んでいる
場所の生態系に大きな影響を与えているといわれています。
日本でもコウノトリは、
140
年ほど前の江戸時代までは全国のどこにでも普通に見られ、繁
殖も行っていました。しかしその後
明治に入って急
激に数を減らし、1956年にはもうすでに20羽ほどしか生
き残っていませんでした。これを受け彼らは特別天然記念物に指定され、保護するために兵庫県の
によって一つがいが捕獲され、
人工
繁殖が開始されました。しかし野生の個体は更に減り続け、1971年に最後の一匹が捕獲されたのを最後に姿を消し、また
飼育されていたものも1986年2月28日に全て死亡してしまったことで、
純日本産のコウノトリは完全に絶滅してしまいました。
したがって現在ではまれに大陸から不定期に渡ってくる一部の個体を除いては、日本の野山でコウノトリを見ることは出来なくなっています。しかし現在兵庫県
にあるコウノトリ保護増殖センターを初め、各地の動物園などでは外国産のコウノトリの人工繁殖が行われており、さらに
人工飼育されたコウノトリを日本の自然の
中で野生に返すことによっ
て、日本産のコウノトリを回復させる試みが行われています。現在コウノトリ保護増殖センターでは
100羽近いコウノトリが飼育
されており、また周辺ではコ
ウノ
トリを放鳥するために自然環境が順次整えられています。
そして
2005年9月24日に
は世界で初めての人工飼育されたコウノトリの放鳥が行われ、
34年ぶりに日本の空にコウノトリが復活しました。この時放たれたコウ
ノトリは
オス2羽とメス3羽の合計
5羽で、秋篠宮文仁親王、紀子夫妻ほか放鳥式典に集まった3500人の人々に見送られての巣立ちだったようです。さらに
2006年4月には
放鳥したコ
ウノトリの産卵が確認され、この年の卵は孵化
しなかったものの
2007年に
はついに1羽のひなの孵化が確認されました。
こ
のひなはその後も順調に育ち、2007年7月31日に無事
巣立ちを行うことが出来たそう
です。日本国内で野生のコウノトリが孵化し、巣立ちを迎えたのは
1961年以来、なんと
47年ぶりの
ことだということです。そしてコウノトリ保護増殖センターでは、今後もより多くのコウノトリの野生復帰を目指して更なる保護活動や
研究が行われています。
いまだ世界各地での生息数の減少が問題となっているコウノトリですが、何とか繁殖にかかわる方々の努力が実って、再び大空を多くのコウノトリが駆け巡る日
が来るのを願って止みません。
コウ
ノトリ関連のトピックス
兵庫県豊岡市で放鳥されているコウノトリのペアの卵から新たに1羽のヒナが孵化しているのが確認されました。コウノト
リのヒナの誕生は放鳥が行われるようになってから3回目で、今年に入って2回目だということです。このヒナは順調にいけば6月頃
に巣立ちをむかえるそうで、早く一人前になる日が待たれます。
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執筆:2008年2月29日
[画像撮影場所] よこはま動物園ズーラシア