キングペンギン King Penguin

悲しみのキング
キングペンギン画像1
動物好きの子供たちにとどまらず、あらゆる世代でかわいさが大人気のペンギンさんですが、 その中で「キング」の 名を冠されているのがキング・オブ・ペンギンことその名もキングペンギンです。

と書いてみたものの実は世の中には、姿形はキングペンギンにそっくりだけど大きさは彼らを上回る世界最大のペンギン「コウテイペンギン」が存在します。上に は上がいるということなんでしょうか、従ってキングペンギンは惜しくも世界第2位の大きさとなっております。コウテイペンギン はドキュメンタリー映画化もされていますが、ペンギンの世界も「王様(キング)」 よりも「皇帝」の方が偉いんでしょうか…??

実はこの2種類のペンギンがこういった関係になってしまったのには歴史的な理由があります。 もともとキング ペンギンの存在は18世紀以前から知られており、当時としては世界で最も大きいペンギンであることから「キング」の名前が付けられていました。しかしその 後19世紀に入って南極大陸が発見されると、さらにそこにはキングペンギンを上回る大きさのペンギンが 暮らしていて、困った当時の人々がこの新種のペンギ ンにキングを上回る「エンペラー(皇帝)」を名付けたと いうことらしいです。

そんなちょっぴり切ないポジションにあるキングペンギンですが、その暮らしはとても恵まれ た状態にあるようで、全世界に は223万羽ものキングペンギンがいると言わ れていて、さらにその数は増え 続けているということです。コウテイペンギンをは じめいくつかのペンギンの生息数が減少していることを考えると、キングペンギンの置かれた環境は非常に喜ばしいと言えます。

またペンギンと言うと南極大陸に住んでいるというイメージがありますが、キングペンギンたちはもう少し北の南緯45〜55度の亜南極と呼ばれる地域にある 島々に生息しています。その分布域も大変広大で、大西洋南部からインド洋の南部、そして太平洋に浮かぶニュージーランドの南まで、なんと地 球一周分に達し ます。

こ の中でキングペンギンは棲む所によってさらに2つのグループに分かれてお り、南大西洋に住むものは「ヒガシキングペンギン」、インド洋と太平洋地域にす むものは「ニシキングペンギン」と呼ばれています。 またかつて一部のキングペンギンが南極に上陸した記録もあるそうです。

キングペンギンのすみかである島で、彼らはコロニーと呼ばれるとても大きな群れを作ります。その数 は少ないもので30羽、大きなものでは南大西洋に浮かぶサウス・ジョージア島などに10万羽以上から成るコロニーが作られることがあります。 コロニーは彼らの生活の中心となり、繁殖のための巣も作られますが、コロニーが作られるのは主に砂浜や岩場などの地面がむき出しになった平らな場所が多く なっています。また気温が非常に低い冬になると、彼らはコロニーの中でたがいに寄り添い、寒さから身を守って過ごします。

水中ではすごいのよ
キングペンギン画像2
キ ングペンギンの特徴と言えばやはりその体の大きさですが、背の高さは90cm体重は13kgもあり、ペンギ ンの仲間では規格外に大きくなっています。またその模様も印象的で銀色をおびた灰色 の背中とは逆に、お腹は真っ白い色をしています。また耳と胸の周り、くちばしの付け根のところにオレンジ色のアクセントが あるところも彼らのおしゃれポイ ントです。またキングペンギンはコウテイペンギンよりもくちばしが長くて、体に比べて頭が大きく、一方キングペンギンのオレンジ色の部分がコウテイペンギ ンでは黄色い色になっていることから彼らを見分けることができます。

キングペンギンは陸の上を歩くときは、短いながらも太い指を持った足でトコトコと歩いていきます。普段彼らが生活している繁殖地であるコロニーは海から何 百キロも離れているため、キングペンギンたちはこの距離を必死の思いをして海まで歩いていきます。そして、陸の上ではゆっくりとしか歩けない彼らですが、一度水 の中に入るとそのひれのような形をした羽を使って、ものすごい速さで泳ぎまわって餌となる魚などを次々と食べていきます

彼らの食べ物 の大部分はハダカイワシなどの小魚で、その他にオキアミなどの甲殻類イカなどを食べます。キングペンギンはペンギンの中では コウテイペンギンと共に群を抜 いて深く潜ることができ、餌を求めす水深100m以上、時に は200mのところまで潜ることもあります。 (これまで記録されたものの中には322mま で 潜ったものもいるそうです)

陸上においてキングペンギンを襲う動物はいませんが、海の中にはシャチやヒョウアザラシなど大 型の海生ホ乳類が待ち構えていて、魚を取っている最中のキングペンギンが餌食となってしまいます。また卵やひなの時期のキングペンギンは、トウゾクカモメやサヤハシチドリ、オオフルマ カモメなどの海鳥に親ペンギンと離れたすきをねらって食べられてしまいます。

子育ては一大事
キングペンギン画像3
キングペンギンは南半球の夏である11月から12月ごろになると繁殖期に入ります。このころになるとオスのキングペンギ ンはおじぎをしたり、頭を振った り、また鳴き声を上げることで結婚相手であるメスを誘います。これに対してメスのペンギンが鳴き声を上げて答えることで、めでたくキングペンギンのカップ ルの誕生となります。こうして誕生した夫婦のきずなはとても深く、どちらか片方が死んでしまわない限りその 後何年間も連れ添うことになります。キングペン ギンの夫婦は本当の意味で「お しどり夫婦」と言えるでしょう。

その後メスのキングペンギンは通常 1個の卵を産み落とします。産み落とされた卵はすぐにメスからオスの手に渡され、オスのキングペンギンはそれを19日間 程度温め続けます。この間にメスのペンギンは何百キロも離れた海にまで移動し、そこで餌をたっぷりと食べてきます。そして戻ってきたメスはオスと交代し卵 を温め、これを繰り返すことで約54日後キングペンギンのひなが卵からかえります。キ ングペンギンは足の上に乗せ て、更に上からだぶだぶしたおなかの皮(抱卵嚢)をか ぶせる形で卵を温めます

産まれた頃のキングペンギンはふわふわしたグレーの毛皮に覆われていますが、約9か月ぐらいで完全に大人のものと同じ羽毛に生え換わります。大人のキング ペンギンの羽毛は4層構造になっていて、いちばん外側のものは外へ熱が逃げるのを防ぐために全体に油が塗られています。しかし産まれたばかりのひなの毛皮 には、そのような機能が備わっていないため、常に親のうちの一方が付き添って世話をします。

また子ペンギンは寒さに耐えられず、冷たい海に潜って魚を取ることができないため、漁はすべて親のキングペンギンが行います。 親ペンギンはえさ場である海 まで移動すると、おなかいっぱいに魚を食べそのまま帰りを待つひなの所に戻ります。そして一部が消化されて柔らかくなった餌を吐き 戻すことで雛に食事を与 えます

ひなが大きくなってくると、彼 らは多くのひな同士から成る『クレイシ』と呼ばれる集団に加 わります。このクレイシはちょうどキングペンギンの保育所のようなもので、付き添いの大人2〜3羽がひな達の面倒を見ている間に、親ペンギ ンは海に行って餌を取ってきます。しかし冬になると餌である魚が少なくなるため、親鳥は2週間に1回程度しか雛に餌を与えることができなくなります。この 間ひな達はクレイシの中でひたすら飢えに耐えながら親の帰りを待つのですが、秋口(6月ごろ)には10kgぐらいあっ たひなの体重は冬の終わりには半分ぐらいにまで減ってしまいます

そして無事に春を迎え産まれてから1年〜1年2か月ぐらいで、子供たちは親ペンギンのもとを離れ一人立ちしていきます。ちょうどこのころは南半球の夏にあ たるため、海には餌も豊富で泳ぎの経験がそれほどない若いペンギンたちも自分でなんとか餌を取ることが出来ます。そして4〜5歳ぐらいになると新しい子孫 をつくるため、若いペンギンたちも繁殖を行うようになります。

自然界におけるキングペンギン の寿命は最高で26年ぐらいであると言われて います。しかし飼育下のものではこれを大きく上回り、41年も生きたキングペンギンが居たことが記録に残され ています。

そんな感じのキングペンギン君ですが、「王様」の名に恥じぬようこれからも胸を張って頑張っていって欲しいものです。

   キン グペンギン関連のトピックス
福井県坂井市の越前松島水族館「キ ングペンギンの散歩」が人気を呼んでいるそうです。同館では7羽のキングペンギンが飼育係さんに誘導されて行進し、観客の前で約 50mの距離を往復するそうです。この散歩は4月6日まで一日2回行われる予定で、時折見せる雪の上を腹ばいになって滑る姿が可愛いと評判です。
2008年2月11 日 読売新聞
北海道旭川市の旭山動物園でも、毎年恒例の人気企画「キングペンギンの散歩」がスタート11羽ものキングペンギンが観客の見守る中、500メートルをパレード したそうです。この企画は積雪がなくなるまで行われる予定だと言うことです。
2007年12月11 日 読売新聞

大阪府大阪市の海遊館12月15日から毎年恒例のキングペンギンのパレードがスタート。イベントが行われ るのは土、日、祝日と年末の2週間ほどですが、飼育係に連れられて7羽 のペンギンがカーペットの上を歩く姿は毎年大きな人気を呼んでいるそうです。

2007年12月5 日 産経新聞

執筆:2007年11月4日最 新改訂2008年2月12日

[画像撮影場所] 
旭川市旭山動物園
旭川市旭山動物園様リンク


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