白と黄色の丸く平べったい体に大きな黒いしましまを持つツノダシ君は水族館やサンゴ礁
の人気者です。
ユーモラスな体でサンゴの間をちょこちょこと動き回る彼らの姿は非常にかわいくて、とてもいい感じです。
彼らは太平洋からインド洋の非
常に広い海域に住んでおり、日本近海の他、南カリフォルニアからペルー沿岸、ハワイ諸島、ミクロネシア全域、そして東アフリ
カ沿岸などでも見ることが出来ます。ハワイに行くと彼らのことを現地の人は“Ki-hi
ki-hi”と呼んでいます。また彼らはサンゴ礁や岩礁など固い地盤のあるところ
に住んでいて、深さ数mほどの浅い海から180m以上の深い海にも分布し
ています。
彼らは主にカイメンという岩肌に付着したスポンジ状の生き物を食べて暮らしているの
ですが、時にはサンゴ藻とよばれる海藻や小型の無脊椎動物などを食べ
ることもあります。彼らは特徴的な細く長い形をした口を持っていますが、これを使って岩やサンゴの割れ目に隠れて
いる獲物を吸い出して捕まえます。またこの口
の中には細かい毛のような歯がびっしりと生えています。
彼らは大人になると大きなもの
で23cmぐらいの大きさにまで育ちますが、
非常に子供でいる期間が長く、その間に長い距離を移動するといわれています。彼
らのチャームポイントに長く伸びた背びれと尻びれがありますが、背びれのほうは先が細長いひものようになっています。彼らの学名は“Zanclus
cornutus”といいますが、この“Zanclus”
というのはギリシャ語の“鎌”という意味であり、大きく伸び
た背びれがまるで鎌のような形をしていることに由来しています。
一般に海の中にいるツノダシは1匹、もしくは2〜3匹の小集団でいることがほとんどで
すが、まれに大きな群れを作るところが目撃されています。
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ハタタテダイ君 |
非常にひょうきんな形をしたツノダシ君なのですが、結構他に似たような形をした魚が多
く、それに間違えられることがよくあります。特にハタタテダイ(左写真)やムレハタタテダイは間違えられ
る代表格で、ご覧のとおりツノダシとは思いっきりキャラがかぶってしまっていま
す。見分けるポイントとしてはツ
ノダシ君の尻尾は黒くなっており、口がハタタテダイよりも長くなっています。他にもチョウチョウウオや淡水魚のエンゼルフィッシュなんかと
も一緒にされてしまうことがあります。
そんなわけでそっくりな姿をした魚が多いツノダシですが、分類学的にはツノダシ科に属する唯一の種
であり、他の魚たちとは別に独自の進化を遂げています。
ツノダシは水族館で人気の高い魚のひとつですが、非常に神経質で長く育てるのが難しい魚と
して有名です。その理由は食性にあり、捕まえてきたツノダシにはすぐに餌を与え
ないと弱ってしまい、その後餌をやっても食べなくなってしまいます。また水の中のアンモニア濃度やpHの変化にも敏感であり、個人の熱帯魚
愛好家の間では中級者以上でないと飼育するのは避けるのが無難と言われています。
これからツノダシをおうちに置いてみようかなぁとお考えのあなたは、ぜひペットショップの人とよく相談してからチャレンジしてみてください。
[画像提供] 株式会社ナレッジリンク様
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