ノコギリエイ Knifetooth sawfish
[『ノコギリ』生えてます]
まるでアメリカのステルス爆撃機のような体に、
大きなノコギリが生
えているというかっくいい姿をしているノコギリエイはインド洋から太平洋西部の砂地の沿岸部に生息するエイの仲間で、日本近海でも見ることが出来ます。体
の色は上側が灰色で、ひっくり返すと薄く白みがかった色をしています。このノコギリエイ君、よくノコギリザメという名前で呼ば
れることがあるのですが、エイ
の特徴である腹側に付いたエラ(サメでは背側になる)を持っており、立派なエイの仲間であるとして分類されています。
彼らは通常は0〜40mの浅い海に住んで
いるのですが、ときには120mの深さにまでもぐるこ
ともあります。更に川や湖の真水が海水と交わる地域に良く見られる、汽水域と呼ばれる非常に塩分濃度が薄い地域にも住んでいます。
一体ノコギリエイはあの大きなノコギリを何に使うのか気になる人もいると思いますが、主に餌をとるために用いられています。海底近くを這うようにして生活
している彼らは、あのノコギリ
を振り回して小魚を打ちのめして弱ったところを食べます。また砂地に突っ込んでスコップのようにして使い、中にいる魚や甲殻類を掘り起こして餌をとること
もあります。鼻を
使って餌をとるのはこいつとゾウさんぐらいなのではないでしょうか?このノコギリの大きさは体の4分の1に及び、左右に三角形の刃が
18〜22個並んでいます。あまり気性の荒い魚ではないので人間を襲うことは無いのですが、捕まえて水からあげるとのこぎりを激しく振り回すので怪我をし
てしまうことがありますので、ノコ
ギリエイを捕まえてみようとお考えの方はこのノコギリ攻撃にはくれぐれも御注意ください。
彼らはの大きさは一般的に全長2m前後ですが、最大のものは470cmの個体が記録されています。さらに大きな610cmに及ぶものがいたと
も言われていますが、こちらの方はあまり信憑性が高くないみたいです。ノコギリエイの生態は今でもあまり良く分
かっていない部分が多く、繁殖方法などの情報もほとんどありません。これだけ特徴的で陸のすぐそばに住んでいるのにあまり調べられていない
のはどうしてなんでしょう?
ノコギリエイの身は食用と
して用いられ、また肝臓からは大量の油が取れるため、アジア各地では主に底引き網を使って商業的にこの魚を捕まえています。しかしながら近
年それによる個体数の減少と彼らの生息地に人の手が入ったことによる影響が深刻なものとなっており、その漁獲量から全世界のノコギリエイの数は30〜50年
前の半分程度にまで落ち込んでしまったといわれています。これに応じて1996年までIUCN(国際自然保護連合)の
絶滅の危険性がある動物のリストである、レッドデータブックには記載されていなかったのですが、2002年になって絶滅の危険がある『危
急種』の指定を受けています。特
にオーストラリアなどではこのエイを救うための活動が活発に行われており、国家的な保護チー
ムを編成するという提案がなされています。
日本の神戸市立須磨水族館
では非常に大きなノコギリエイの剥製標本が展示されていますが、何も知らずに見たらその大きさにかなりビックリします。興味のある方は是非
一度訪れてご覧ください。
[画像提供] 株式会社ナレッジリンク様