メガネモチノウ オ Humphead Wrasse

サンゴ礁の王様
メガネモチノウオ画像1
世界で最も華やかで美しい海であるサンゴ礁。そのサンゴ礁で最も美しく、印象的な魚の 一つが このメガネモチノウオです

分厚い唇頭の上のでっぱりが極めて特徴 的な彼らですが、オスのメガネ モチノウオはなんと全長2mを超えるまでに成長します。 彼らは実はベラの仲間な ので すが、その中ではずば抜けて大きくなる魚で、ベラの中では世界最大の大きさを誇っています。特に横から見た時の上 下方向の幅も広いことから他の魚より も、より体が大きいような印象を受けます。これまで記録されている中で最も大きな個体は全長2.29m体重は190.5kgもあったそうで、イメージ的 には畳よりも2〜3回りぐらい大きいといった感じでしょうか?ちなみにメスのメガネモチノウオの場合は大きくなってもせいぜい最大で全長1mぐらいまでの ようです。

ところでなぜ彼らは「メガネモチノウオ」という変わった名前を持っているかご存知でしょうか?これは彼らの見た目に由来しており、メガネモチノウオは目の 後ろ と、目から口にかけての部分に黒いラインが走っています。この特に目から後ろに向かって生えているラインが ちょうど眼鏡のつるの部分に似ていることから、 メガネを持っている魚ということで「メガネモチノウオ(眼鏡持之魚)」と 呼ばれるようになったということです。また彼らは別名ナポレオンフィッシュといい ますが、これは体の3分の1をしめる大きな頭の目の上の部分にあるこぶがナポレオンのかぶっていた帽子に似 ていることからこの名前が付いたそうです。また英語名の「Humphead Wrasse」というのは「こぶのあるベラ」という意味で、中国では「蘇眉(ソウメイ)」と呼ばれています。

メガネモチノウオは主に太平洋 とインド洋の熱帯地域に点在する多くのサンゴ礁で見ることが出来ます。サンゴは浅い海にしか生息しないため、それにともない彼らも深くても 水深100mぐらいまでの比較的浅い所に生息しています。子供の頃はサンゴや海草などに隠れるようにして暮らすことが多い彼らですが、大人になって体が大 きくなるともう少し広々とした場所で暮らすようになります。そして夜になると岩の隙間やサンゴの下などで眠って過ごすそうです。日本にも南西諸島で見ることが出来、まれに和歌山県な どでも姿を現すことがあるようです。

大人のメガネモチノウオのオスは緑がかった明るい青い色をしており、サンゴ礁ではその綺麗な体がカラフルなサンゴととても良くマッチしています。これにた いして子供とメスは 全体的に赤みがかっており、目の後ろの模様がオスのものよりはっきりしています。また頭の上のこぶは特にオスで発達し、年を経 るにつれて大きくなっていき ます

スキューバーの人気者
メガネモチノウオはかなり幅広い種類の食べ物を食べる魚で、主な餌としては軟体動物や小魚、ウニ、そ してエビなどの甲殻類を食べます。また彼らは相手がを持つ生き物であっても何の問題もなく食べることが出来るよ うで、アメフラシやハコフグ、オニ ヒトデのような、我々人間であれば一度食べるとお腹が痛いではすまないようなものまで平気で食べています。

メガネモチノウオは大体5〜7歳ぐらいで大人になり、繁殖を行うようになります。 またベラの多くの仲間がそうであるように、彼らはなんと一生の間で性別が変化し、最初メス だったメガネモチノウオはある時期が来るとオスへと変化して、見た目も変わります。ですが彼らがどのような理由で、どのタイミングにこの性 転換を行うのかはまだよく分かっていません。彼らはあるきまった産卵地をもっており、一年のある時期になるとそこに集まって繁殖を行います。普段は単独行 動の多い彼らですが、繁殖期になるとオスとメスのカップルで行動したり、まれに3〜7匹ぐらいの小さな群れを作ることもあるそうです。

ところで最近、2008年2月日本の名古屋水族館で飼育されているメガネモチノウオが卵を産卵し、その孵化にも成功したという報告がなされました。卵は数日間 にわたって何度も産卵が行われ、一 度の産卵で透明で直径0.7mm卵が数万〜数十万個産み落とされる様子が確認されました。産 まれた卵はすぐに水面に浮かび、そのままただよい続け、2日目には全長1.5mmの子供が産まれ ました。同水族館ではふ化した子供の繁殖も試みましたが残念ながら失敗に終わり、次回以降に再挑戦する予定だそうです。

彼らは非常に長生きする魚の一つで、これまでの最長寿記録としてなんと32歳まで生きた個体が確認さ れているそうです。

メガネモチノウオは一度ある場所に棲み始めるとしばらくそこに居続ける性質があり、また人懐っこいためスキューバーダイビングを するダイバーのところに寄ってくることから、スキューバーをする人には人気があり、エジプトやオーストラリアなどの国々では彼らがいるとこ ろに数多くのダイビングスポットが作られています。かつては彼らをおびき寄せるため、ゆで卵を与えていたところもあるようですが、彼らの体にあまり良くな いということで、現在は行われていないようです。

そんな世界中のサンゴ礁でダイバー達に人気のある彼らですが、実は近年その生息数が大幅に減少しており、世界自然保護連合のレッドリストにも記載され、絶滅の危険性が心配されています。これは一つに観賞目的に販売・輸出するため、大量のメ ガネモチノウオが捕獲されていることが原因と考えられます。また我々日本人には意外な印象を受けますが、特に東アジアの地域で彼らの肉は大変人気 があり、食用としても多くのメガネモチノウオが捕まえられて います。(ちなみに彼らの肉は白身で、とくに用魚のものはとても柔らかくて美味らしく、天ぷらや刺身にして食べられているそうです。)彼ら を捕まえる主な方法は体をモリでついて殺してしまうといったものですが、中には青酸ナトリウムのような毒物を海にまいたり、ダイナマイトを使うようなかな り乱暴なものまであるそうです。しかしながら彼らの肉は1kgあたり数万円の値がつく ことから、商業的に彼らを狙った漁は後を絶たないようです。

彼らはそれほど繁殖スピードが速くないため、一度数が減ってしまうとなかなか回復することが出来ません。従って、これを受けアメリカやオーストラリア、イ ンドネシア、マレーシア、モルジブなどでは教育や水族館での展示用以外の捕獲は全面 的に禁止されています。また現在世界中で急速にサンゴ礁が死滅しており、それによる生息地の減少も彼らにとっては大変危険なものといえま す。

彼らは太古の昔から主に太平洋の島々に棲む人々にとっては神聖な生き物であり、その存在を守ることは文化的にも非常に価値の高いものであると言えます。

   メガ ネモチノウオ関連のトピックス
愛知県名古 屋水族館飼育中のメガネモチノウオが産卵に成功したそ うです。産卵したのは「サンゴ礁の海」と呼ばれる水槽に飼われているメガネモチノウオで、このところほぼ毎日産卵が確認されているそうです。一回の産卵では数万から数十万個直径0.7mm程度の卵が水中に産み落とされ、その後はばらばらに水面 に浮かぶとのこと。同水族館ではふ化した子供の繁殖を試 みましたが、残念ながら今回は失敗。次回から飼育条件を向上させて再挑戦する予定だそうです。
2008年2月15 日 名古屋水族館

執筆:2008年2月15日(最 新改訂2008年2月17日

[画像撮影場所] 沖縄美ら海水族館

沖縄美ら海水族館様リンク

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