この世の者とは思えない凶悪な顔つきを
した写真の彼は、その名も
ドクウツ
ボといいます。誰が
付けたか知りませんが、この上なくぴったりな凄みのある名前のような気がするのは私だけでしょうか?
彼らは英語名を
「Giant
Moray(巨大なウツボ)」といい、
その名の通りウツボの仲間では最も大きくなる種です。一般的な大きさは
全長1.5mぐらいで、これ
でもかなり大き
いのですが、今までに記録として残っているものの中には
全長3m、体重30kgもあったものがいたという
から驚きです。こんなのに海の中で出会ったら、さぞかしすご
い迫力なんではないでしょうか?
また彼らは全身が明るい黄色もしくは茶色い色をしていて、さらにびっしりと黒い斑点が並んでおり、派手な模様を持つものが多いウツボ類の中にあってひとき
わ特徴的で美しい姿をしています。この黒い斑点は顔にあるものはサイズが小さくなっていますが、頭の後ろ側から次第に大きくなり、ヒョウ柄のような模様に
なりま
す。また
えらの穴の所の周辺が
黒くなっている点で、他のウツボと見分けることが出来ます。
ウツボの一種である彼らは背びれ、尾びれ、尻びれが一続きにつながって大きな一つのひれを形成しており、また逆に胸びれや腹びれは退化して無くなってし
まっています。
ドクウツボはインド洋から太平洋にかけての熱帯の海に広く分布し、特にサンゴ礁や岩場に見られます。日本にも南西諸島周辺の海に見ることが出来ます。
彼らは口に
鋭くて大きな犬歯を持ち、これを使って主に魚を捕まえて食べています
が、その他にエビなどの甲殻類も食べるそうです。餌を狩るのは主に夜で、昼間は岩場の穴の中などにじっとしています。
ところで彼らのドクウツボという名前は別に体の模様が毒々しいから付けられたというわけではなく、
本当に毒を持っているからこのように呼ばれるようになりまし
た。その毒というのはヘビのように獲物に噛みついて注入する武器としてものではなく、
彼らの全身に含まれていて我々人間が食べ
ると食中毒を引き起こすタイプの毒素です。
これは
シガテラ毒と
呼ばれるものであり、本来ドクウツボたちはこの毒を持ってはいません。実はもともと
この毒を作りだすのはある藻の一種で、それが食物連鎖の上に立つ動物た
ちの体内で次第に濃縮されていき、最終的に
最も上位に位置するドクウツボの中にはか
なりの濃度で存在することとなります。そしてこのようなドクウツボを人間が食
べると吐き気をもようし、胃腸障害や筋肉の痛み、ひどい時には
麻痺や
幻覚を引き起こすということな
のですが、あんな模様の彼らを食べるなんて世の中には怖
いもの知らずな人がいるんだなぁと逆に感心してしまいます。そしてこの毒は大物のドクウツボほど強い傾向があるそうです。
また彼らの棲むサンゴ礁はスキューバーダイビングの人気スポットとなりがちなのですが、
彼らに近づきすぎると場合によっては怒っ
て噛みついてくることがあ
ります。大きな体を持つ彼らは噛む力が強く、歯も鋭いことから、
下手をすると深刻な傷を負う危険性もあり
ますので、ドクウツボのいる海域で泳ぐ時にはくれぐ
れもご注意ください。