ナガレヒキガエルは日本だけに棲むヒキガエルで、
石川県、富山県などの中部地方西部から奈
良県、和歌山県などの近畿地方にかけての本州中央部に分布しています。
彼らは世界でも珍しい渓流の中で繁殖を行うカエルで、英名もそれに基づいて名
付けられています。
ナガレヒキガエルはかなり大型のカエルで、オスは7〜12cmぐらいですが、メスはそれよりも大きくなって9〜16cmまで成長し、これまで知られているも
のの中で最大のものは16.8cmという記録が残っています。
彼らの見た目はヒキガエル(ニホンヒキガエル)に似ていますが、特徴としてヒキガエルでは体の外に大きな鼓膜が露出
しているのに対し、ナガレヒキガエルの場合はあまりはっきり
としていません。またナガレヒキガエルは比較的長い足を持っています。
彼らの体は深い緑色をして、白や濃い色の縞がはいっていますが、中には赤やオレンジの斑点を持っているものも知られています。お腹の方は黄色い色をしてお
り、また足の部分の縞はオスよりメスのほうがくっきりとする傾向にあるようです。
ちなみに彼らは「クックックッ」という鳴き声を出すそうです。
普段
ナガレヒキガエル達は渓流
に近い、山の中の森に棲んでおり、標高50〜1700mの比
較的高い地域に見られます。ヒキガエルの中でも彼らのように渓流の周りに生息するものは珍しいのですが、まれに木の上などにも上ることが知
られています。
ナガレヒキガエルは肉食で、周辺に棲む昆虫や節足動物、サワガニなどの甲殻類、ミミズ等を食べます。彼らは
長い舌を持っており、それを素
早く伸ばした獲物
を捕らえ、大きな口で丸のみしてしまいます。
彼らの繁殖期は3〜5月で、渓流の脇の滝つぼなど水深10cm〜2mの水場にゼリー状のかたまりの中、ひも状に連なった卵を産み落とします。一度に産み落とさ
れる卵の数は
2500
個に達し、渓流によって流されないように、
木や石に捲きつけて産卵します。
産まれてくるオタマジャクシも親と同じように
大きな口を持っており、これを
使っ
て急な流れの中岩などに吸
いつきます。こうすることで流されることなく、渓流の中で成長していきます。
ナガレヒキガエルの存在が正式に報告されたのは比較的最近の今から30年ほど前の
1975年のことで、調査期間
が短いことからその生態についてはまだよく
分かっていません。しかし、近年の森林伐採による生息地の減少にさらされているといわれており、また渓流という周りの影響を受けやすい場所に棲んでいるこ
とから、ある日突然大幅に数を減らす可能性もあるのではないかと心配されています。
しかしながら一方で生息数は今のところ安定していて、それなりの数が生息していることから、国際自然保護連合の
レッドリストの中では絶滅の可
能性のある動物としては最も危険度の低い
「軽度懸念」というカテゴリー
に分類されており、また各地でも保護活動が盛んに行われています。
執筆:2007年12月27日
[画像撮影場所] 東山動植物園
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