メキシコサラマ ンダー Axolotl

大人になっても子供?
メキシコサラマンダー画像
右の写真に写っているひょうきんな顔の彼ら は、その名前をメキシコサラマン ダーと言いま す。「あれ?同じような姿の生き物を、昔見たことあるような気がするけど、そんな名前だったっけ?」と思ったあなた、ご名答です。そ う、彼らこそが今から20年ほ ど前の1980年代に、日本中をブームに巻き込んだ、あの「ウーパールー パー」君なのです

というわけで現在30歳以上の方々には大変なじみ深いメキシコサラマンダー君なのですが、彼らには別名が多く(一説には40種類を超えると言われていま す)英語名は「アホロートル (Axolotl)」 といい、現在は主にこちらの名前でも個人収集家の間などで親しまれています。

ウーパールーパーはよく知っていても、「ウーパールーパーの原産地はどこ?」と聞かれると困っちゃう人が多いと思いますが、メキシコサラマンダーの名前が 示すとおり、彼らは中央アメリ カはメキシコにのみ生息しています。そしてそ の中でもメキシコの首都であるメキシコシティに近い、標高2200m以上の高地 にある、チャルコ湖ソチミルコ湖という2つの湖でしか見つかっていません。 つまり世界でもこれらの湖しかいない、珍獣中の珍獣的な存在 となっています。

彼らの体の特徴は何といっても首 の両側に付いている、ひらひらとした羽のような突起ですが、これは実は呼吸をするためのえら「外鰓(がいさい)」と呼ば れます。多 くの両生類はオタマジャクシからカエルになるように、子供の頃はえら呼吸をして大人になると肺呼吸を行うようになりますが、これを「変態」といいます。こ れに対してメキシコサラマン ダーの場合、変態を行わず、多くの個体がこの子供の証であるえらを持ったまま大人になってしまいます

変態を行わなずに成熟したメキシコサラマンダーは大変寿命が長く10〜15年、場合によっては25年も生き続けることがあります。しかし、ごくまれに 変態 を行い、えらを失って、肺呼吸を行うようになった、いわゆる成体型の個体が現れますが、こ の場合は変態後すぐに死んでし まい、5年程度しか生きられないと言われてい ま す。自然界ではこのような成 体型のメキシコサラマンダーはほとんど見ることができず、何がきっかけで変態が起こるのかは良く分かっていませんが、飼育下のものでは飼っている水槽の水 位を下げたり、甲状腺ホルモンの注射することで人工的に変態を引き起こすことが出来ると言われています。

カラーバリエーションが豊富
メキシコサラ マンダーの全長は平均23cm、最大のものでは30cmになると言われています。体重はおおよそ85gぐらいです。体の後ろ側には大きなひれ の付いたしっぽがあり、彼らはこれを使って水中を泳ぎます。

メキシコサラマンダーはアクアリウムと呼ばれる家の中の水槽でペットとして飼われることも多く、金魚や鯉などと同じようにこれまで数多くの品種が開発され てきました。もともと野生にいたものは上の写真の真ん中にいる者のように、緑がかった灰色をしていて、濃い色の斑点が全身に描かれています。これに加えて 現 在では体全体が白いアルビノや黄色い色のゴールデン、真っ黒い色のメキシコサラマンダーなど、様々な色をしたものを見ることができます。

メキシコサラマンダーは卵を産むことで増えますが、孵化後約一年でオスもメスも性的に成熟 し、繁殖が可能になります。飼育下のものは繁殖を行う時期は決 まっておらず、一年中いつでも繁殖しますが、自然界における産卵の時期は3〜6月ごろであると考えられています。そして繁殖の際にはオスとメスのメキシコ サラマンダーが互いにワルツを踊るように円を描いて泳いだ後、オスが精子の入った精包とよばれる袋を水底に置き、それをメスが卵を産むための排出腔という 穴に取り込んで受精します。

その後メキシコサラマンダーのメスは100〜300個もの卵を水底に産みます。通常両生類の 卵は、カエルのもののように全部の卵がひとまとめになって産み 落とされますが、メキシコサラマンダーの場合はゼリー状の保護膜で覆われた卵が一つずつばらばらに産み落とされます。これはそれぞれの卵が水に十分触れ、 多量の酸素を取り込むことが出来るようにするためであると言われています。そして10〜14日ぐらいすると卵がふ化し、子供のメキシコサラ マンダーが産ま れてきます。

驚異の再生能力
メキシコサラマンダーは大変大きな口を持っていますが、その姿にふさわしく動くもので口に入るものなら何でも食べると 言っていいぐらい、多くの種類の獲物を捕 食することが知られています。そんな彼らの主な獲物は軟体動物や魚、昆虫などの節足動物です。

一方彼らが生息していた
チャルコ湖とソチミルコ湖という湖では彼らの天敵になる動物は水鳥のみでした。しかし近年これらの湖にそれまで生息していなかった 外来性の魚などが人間によって持ち込まれるようになり、 それによってメキシコサラマンダー達が次々と食べられてしまって、その数を急激に減らしてしまう状況になっています

さらに近年メキシコでは人口増加に伴い飲料水の需要が増え、彼らの棲む湖からも水が大量に流出し、生活の場である水辺がどんどん減少しています。特にチャ ルコ湖は完全に水が失われ湖自体が消滅してしまっており、こ こに住んでいたメキシコサラマンダーは完全に絶滅してしまい ました。またも う一つの生息地であ るソチミルコ湖も小さな沼が点在するだけになっており、自然界におけるメキシコサラマンダーはほぼ絶滅してしまったのではないかと考えられ ています。

このため自然界におけるメキシコサラマンダーについて、その生態はあまりよく分かっていないのですが、現在のところペットや研究用に世界中で数多くの個体 が飼育されています。メキシコサラマンダーは体が傷ついた時に再生する能力が高く、中 にはは脳の一部を再生した例も知られています。 このため特に再生医学などの研究では長年用いられてきており、その他発生学や神 経学などの研究にも彼らが役立っています。

そして実は現在飼育されているメキシコサラマンダーは全て1864年にメキシコからフランスのパリへ送られた33匹の個体がその祖先であると言われています。この 140年の間に、たった33匹のメキシコサラマンダーから世界中で見られるまで増えたと思うと不思議な気がしてなりませんが、まさに彼らの人気のおかげと 言ったところでしょうか?

また意外なことに彼らは現地で食用としても用いられる場合があり、焼いたりゆでたりした後、酢やトウガラシ、コショウ などで味付けして食べられているそうです。そしてこのため数多くのメキシコサラマンダーが珍味として乱獲された歴史があるのですが、それほどまで彼らのお 肉は美味し いのでしょうか??なお現在は法律で保護されているため、採って食べることはできません。

メキシコじゃ神様なのに…
メキシコサラマ
ンダーはよく「アホロートル」という言葉で 呼ばれますが、これは現地のア ステカ人の神話に登場する「ショロトル(Xolotl)」と いう神様の名前に由来していると言われています。もともとこのショロトル神は死と再生の象徴であり、太陽神であるトナティウから逃れるためにメキシ コサラマンダーに姿を変え水の中に逃げこんだという言い伝えが残っています。しかしその後このショロトル神は捕らえられ、太陽神と月の神に 食べられてしまったということなのですが、メキシコサラマンダーの驚異的な再生 能力が死と再生の神として神話の中に残されたのでしょうか?

ちなみに日本では「ウーパールー パー」の名前で有名ですが、このように呼ばれているのは世界中で日本だけです。な んでも、もともとはとあるプロデューサーが「スーパールーパー」と して登録商標して売り出そうとしたところ、他にも「スーパー」の付く商標が多いため審査に時間がかかることから、少しでも早く登録されるように「ス」「ウ」に変えて申請したのがことの発端らしいです。当の ウーパールーパー達からすれば微妙なことこの上ない名前のつけられ 方なのですが、現在はそれよりも英語名の「アホロートル」と言う名前で人気を呼んでいるようです。

執筆:2007年11月16日
 
[画像撮影場所] 恩賜上野動物園

恩賜上野動物園サイトバナー

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